ブリヂストンに入社
親友のヒマラヤ登山の資金集めで財界を回るうちに、ブリヂストンとのご縁ができ、昭和34年(1959年)、私の入社が決まりました。
新入社員として福岡県の久留米工場で実習があり、その時の思い出をしたためた随筆が手元に残っていたのでご紹介します。
「『クルメ、クルメ、クルメ、クルメ』と慌ただしく流れる駅の拡声器の声に迎えられて、生まれて初めて久留米の土を踏んだ時から、早半年になる。筑紫平野をゆったりと流れる築後の流れを渡るころから、あの異様なゴムのにおいが鼻につくのでひょっと見ると、写真で心覚えしていた巨大な煙突や建物が、もうすぐのところに近づいている。
生まれて初めて九州にわたった私たちが、駅を降りてまず心配したことは、駅から会社への道順を聞いてはたしてうまく言葉が通じるだろうかということと、それよりもそんなことを聞いたら袋叩きにされるんじゃないか知らんと思ってびくびくしておったものである。なにしろ、それほど久留米の街は、天下のBSの街だと聞いていたからである。幸い言葉はうまく通じて、丁寧に道順を教わることができた。こんな思いでを笑い種にして習いたての久留米音頭を口ずさみながらクルメを後にするまでほんの一瞬の出来事のように過ぎてしまった。
それほど学生時代とは違った意味で、充実した
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