住友理工は12月21日、欧州における新たな事業展開として、フレキソ事業の生産拠点をイタリア・トリノに設けると発表した。
フレキソ印刷版の生産は、子会社の「ダイテック―ダイナミック・フルード・テクノロジーズ(ダイテック社)」が行い、再来年初めから稼働を始める予定だ。
フレキソ印刷は、版の素材にゴムや合成樹脂を使った凸版印刷の一種で、インキの種類も被刷体も選ばない印刷方式。特に、水性インキで印刷ができることから環境にやさしく、直接体に触れることの多い食品や医療・衛生用品のパッケージ分野での導入が進んでいる。
また、ネット通販の浸透で段ボールへの印刷の需要が増加し、包装資材の省資源化が求められる中、缶や瓶、紙箱に代わる包装材として注目を集めるソフトパッケージへの印刷を得意としていることから、世界的にも今後ますますの需要拡大が期待できる印刷技術だ。
住友理工は09年にフレキソ印刷事業に参入し、コアコンピタンス「高分子材料技術(配合)」により、フラットトップ・ドットによる高解像度と短時間製版を実現。加えて、これまで製版工程では有機溶剤を使った手法(溶剤現像)が主流だったが、同社は溶剤を使わない水による手法(水現像)で環境負荷を低減できるフレキソ版を独自開発した。
これにより、溶剤・光熱費用などが削減でき、ランニングコストの低減が可能となった。さらに、独自設計による製版機と廃液レスシステムを開発し、製版工程で発生する現像液をリサイクルできるシステムにより、環境ソリューション事業への参入も果たしている。
同社フレキソ事業の売上の3割を占める欧州市場は、今後の大きな成長が期待できる最重要市場で、新工場の投資金額は約500万ユーロ、欧州事業の18年度の売上は約1400万ユーロを見込む。
今回、子会社の事業拠点のあるトリノに生産工場を設けることで、為替リスクの回避、受注から納品までの期間短縮などを実現し、同社グループとしてのシナジーを最大限発揮して、欧州の主要顧客のニーズに迅速に応える体制が整うことになる。