ゴム技術フォーラムは昨年6月に創設30周年を迎えた。12月には「創設30周年記念月例会」が開催され、「ゴムの補強」をテーマにした二つの講演を基に活発な討論が繰り広げられた。この月例会は366回目に当り、奇しくも単純計算でこの30年と6か月の間、毎月1回月例会を開催してきた勘定になる。先輩諸氏の努力の賜物である。そこで、創設当時を中心に、このゴム技術フォーラム30年の来し方を振り返ってみたい。
米国が財政と貿易の双子の赤字に悩んでいた1980年代前半、日本はハイテク景気の真只中で自動車輸出を中心に過大な貿易黒字を叩き出していた。この問題はその後のプラザ合意による円高誘導で解消されることになるが、この頃故古川淳二先生(京大名誉教授、元日本ゴム協会会長)は日本の工業、就中ゴム工業基盤の危うさを感じ取られ、1985年の日本ゴム協会科学技術奨励金(当時の賞金は100万円。現在の若手を対象とした少額の奨励金制度とは異なる、)に自ら応募され、『「ゴム工業と先端産業」の公開セミナーとゴム産業の将来への提言』をテーマに受領された(当時のゴム協会会長は東工大名誉教授の山崎升先生)。この資金を元手に「我国の工業は大変革の時期を迎え、・・中略・・。ゴム工業は永年の歴史をもってはおりますが、その将来像については必ずしも予断を許さない状態と思われます。・・中略・・総合的なフォーラムも必要かと考え、ゴム技術フォーラム委員会を設け勉強会を開催したいと企画いたしました。」としてゴム協会の関連組織として「ゴム技術フォーラム」を1986年に設立、この年度にゴム協会を含む6学協会共催の公開フォーラム(参加者約300人)1回と会員のみによる18回の月例講演会を開催している。何とこれを代表、副代表とたった5人の運営委員で実行している。すごい馬力であり、ただ感服するのみである。
翌1987年、故山下晋三先生(京都工繊大名誉教授)がゴム協会