日本試験機工業会(岡崎由雄会長会長)は昭和15年発足以来、今年2月で創立70周年を迎たが、これを記念して10月12日、東京・港区のホテル日航東京で創立70周年記念式典を開催した。
式典は記念講演と懇親会の2部構成がとられた。式典の冒頭、あいさつに立った岡崎会長は同工業会の70年の歩みを概略紹介し「現在はアジア系企業の台頭で国境のないグローバルな発展の時代に突入、このため試験機業界の役割もますます重要になることが予想され、このニーズに応えるため、我々も技術力を高めることが課せられた課題である。さらに販売ソフト面まで含めた活動が重要になっていくと考えている。
今後は会員企業と顧客のコミュニケーションを一層強固なものとし、時代にマッチする試験機の開発を推進し、わが国機械業界発展のための縁の下の力持ちとなり得るよう役割を果たしつつ、今後の80年、90年、100周年に向けて頑張っていきたいと存じる」と述べた。
会長あいさつの前には、試験機工業会の設立当初から現在までの歩み、業界動向などを紹介するビデオが上映され、会長あいさつのあと、記念講演として京都大学の篠原真毅教授が「宇宙太陽発電所」と題して宇宙環境利用への挑戦、上空3万6000kmの宇宙インフラについて最新の研究動向を解りやすく解説し、未来を創造する有意義な講演会となった。
篠原教授は「人類が宇宙環境を利用しているのは、今はまだ建設中の宇宙ステーション程度であるが、しかし今後は地球外資源を利用した宇宙工場や宇宙農場を目指すことになる。宇宙太陽発電所(SPS)はその第一歩で、気象衛星ひまわりと同じ上空3万6000kmに設置し、重量は1㌧弱の衛星で、発電量は100万から数100万kwを想定している」などと語り、人類が将来に向けて宇宙そのものの活用を図る大きな構想について言及した。
講演会終了後は会場を移して懇親会が行われ、会員企業の代表や取引関係先の代表、官公庁からの来賓ら多数が出席して、同工業会の70周年を祝した。
篠原京都大学教授の講演要旨は次の通り。
「SPSは国際宇宙ステーションの100倍の大きさの宇宙建物で、実現目標は2030年ごろ。太陽光発電とマイクロ波無線電力伝送という日本が世界に誇る技術を用いて、自然エネルギーの弱点を克服した安定な新エネルギーを実現する。SPSの技術は様々なスピンオフを生み、環境経済への寄与も大きく、今後の技術イノベーションと環境問題の解決、そして宇宙開放系への展開を図ることができる」
「人は太古の昔から宇宙に憧れと畏怖を持ってきた。それは空を飛ぶことのできない人類が決してたどり着けない遠い世界だったからであろう。有人ロケットや国際宇宙ステーションなどによって、500名弱とはいえ、人間は重力から一時的に解放された人たちが現れている」
「人間はエデンの園から追放されて以来、過酷な環境でも生きられるように智恵を使い、砂漠や極地ですら生活できるようになってきた。未知の宇宙環境を乗り越え、大いなる宇宙を利用すべきであり、私たちの夢は宇宙からの電力を利用する世界を作り、宇宙環境を利用した宇宙開放系の生存圏を確立することにある」