タイ洪水被害 ゴム部品メーカーにも影響

2011年10月17日

ゴムタイムス社

 部品調達に支障 工場水没で生産停止

 記録的な大雨による洪水の被害が広がるタイで、アユタヤにある2ヵ所の工業団地に立地する工場が水没し、生産停止の状況が続いている。日系ゴム企業でも鬼怒川ゴム工業やタイガースポリマーなど多くのメーカーが進出しているが、被害状況を把握することが困難な上、復旧のメドがつかないのが現状となっている。
 深刻な被害を受けているのは、バンコクの北100kmほどのアユタヤの工業団地。広範囲に水につかり、人が立ち入ることもできない状況になっているという。
 ジェトロバンコク事務所によると「これらすべての企業の工場が浸水によって操業不能になっている。3m以上の水につかったままの工場もあり、被害状況自体を把握できない企業がほとんど」だという。操業停止に陥った企業からの部品調達が滞り、別地域にある工場の稼動にも影響が出始めており、稼動を取りやめる日系企業も相次いでいる。
 アユタヤの工業団地には、自動車メーカーのホンダをはじめ、日立製作所やパナソニック電工、ニコンなど自動車部品や電気機器など、約200社の日系企業が入っている。
 タイの気象当局によると、大雨の降りやすい雨季は10月末ごろまで続く見込みで、日系企業への被害がさらに拡大することも懸念される。
 ゴム部品の需要先である自動車メーカーの動向をみると、ホンダ(アユタヤ県ロジャナ工業団地)は四輪車工場で取引先からの部品供給が停止し、10月4日から8日まで生産を休止した。これにより4500台の生産に影響が出た。工場内に立ち入ることができず、操業再開時期は未定。同社のタイ拠点は、インドネシアやフィリピンへの部品供給拠点としても活用しており、生産停止が長期化すればASEAN各国にまで生産に影響が出る可能性を含んでいる。
 トヨタ自動車は部品調達が滞り、10月10日から3つの車両工場で生産停止となった。17日以降の生産については状況をみて判断する予定だが、部品調達の面から稼動は難しい状況。
 マツダは米フォード・モーターと折半出資で設立した四輪車工場(ラヨーン県)があり、サプライヤーからの部品供給に影響が出ているため11~12日の操業停止を決めた。工場自体に被害はないという。
 タイの洪水被害は当初、北部だけであったが、雨量増大で中部にまで被害が広がり、中部アユタヤ県のサハラタナナコン工業団地は4日には浸水した。水位は深いところで3mに達した。その後、中部の広い範囲で洪水が発生し、チャオプラヤ川の増水で世界遺産の寺院遺跡「ワット・チャイワタナーラーム」が浸水。6日には病院なども水没した。
 アユタヤ県のロジャナ工業団地やバンパイン工業団地に工場を持つ企業は、被害が長期化すれば東日本大震災の時と同様、サプライチェーンが寸断される可能性がある。対策としては、納品遅れを回避するため国内で代替生産する準備や生産拠点の移管も開始した企業もあるという。
 一方で、現在は被害がない企業も土のうやポンプ、非常用の飲料水・食料を用意するほか、洪水の拡大に備えて製品を高所に移動させる措置などを講じている。
 「水が引くのに1ヵ月以上必要で、生産再開には数ヵ月かかる恐れがある」(日系自動車メーカー)との声もあり、日本やインドネシアからの完成車輸出も検討され、部品メーカーの操業並びに今後の事業展開にも影響を与えそうだ。
 主な日系ゴム部品メーカーの被害状況(13日現在、本紙調査、一部発表含む)は次の通り。
 〈東海ゴム工業〉
 工場建屋の洪水による被害はなし。ただし、タイへの出張の自粛を考えている。
 〈タイガースポリマー〉
 アユタヤのタイガーポリ(タイランド)の敷地および建物が浸水し、工場の操業を一部停止。9日以降は工場内に立ち入ることができず、12日時点では被害の詳細を把握できていない。タイガースポリマーから派遣している駐在員およびその家族の安否は、全員無事が確認されているが、現地従業員については安否確認中。同工場の生産は家電用ホース・ゴム成形品・樹脂成形品で復旧時期は未定。
 〈興国インテック〉
 ロジャナ工業団地内の工場に立ち入れない状況。1994年に「タイコウコクラバー」を設立、アユタヤ工場は翌年の95年に設立した。同工場の被害状況や復旧の見通しになどについては未定。
 〈旭ゴム〉
 2002年設立の「TDAラバーコーポレーション」がアユタヤに所在し、水没して立ち入れない状況。生産品は機械・器具用ゴム製品。従業員の安否については全員確認済みで、人的被害はない。
 〈トーシンケミテック〉
 トーシンケミテック(タイランド)は、タイ国投資奨励委員会の奨励許可を受けて家電・工業用ゴム製品の製造拠点として95年にロジャナ工業団地に設立。直圧および射出成形機で防振ゴム、ゴムパッキン等を製造。現在、操業は停止しているが、従業員の被害はない。11月以降、工場排水に移り、下旬には工場に立ち入り、最終的な被害の確認および復旧を目指す計画。
 〈ホッティポリマー〉
 2011年2月に設立した「ホッティポリマー(タイランド)」がロジャナ工業団地内の工場にあるため、今回の洪水の影響で立ち入れない状況。  
  従業員に被害が及ばなかったが、同子会社の被害状況や復旧の見通しになどについては未定となっている。状況がわかり次第、被害の確認、復旧の準備に取りかかる予定。

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