CR事業の収益改善で 基盤事業でも特殊化を推進
デンカの2017年3月期連結決算は売上高が3626億47百万円、前年同期比1.9%減、営業利益は258億44百万円、同15・6%減の減収減益となった。
売上高は「販売数量は増加したが、円高による手取り減少や原材料価格の下落に応じて石化関連製品の販売価格を見直ししたため、前年同期に比べ72億500百万円の減収」(山本学社長)となった。収益面では円高の影響に加え、スチレンモノマーの隔年定修や海外展開および研究開発の加速による費用増が収益を圧迫した。
エラストマー機能樹脂部門の売上高は、1517億5百万円、前年同期比2・5%減。クロロプレンゴムが円高により手取りは減少したが、青海工場に加え、前年度後半に事業を開始した米国の子会社デンカパフォーマンスエラストマー社が年間を通して順調に稼動し、販売数量が増加し増収となった。スチレンモノマーやABS樹脂、シンガポールの子会社デンカシンガポール社のポリスチレン樹脂等は、出荷は順調に推移したが、原材料価格の下落に応じて販売価格を見直ししたため減収となった。営業利益はスチレンモノマーの定修に加え、円高による輸出クロロプレンの手取り減、スチレン系製品のスプレッド縮小などにより、前年に比べ減益となった。
電子・先端プロダクツ部門は、電子部品・半導体搬送材料用部材の機能フィルムやLED用蛍光体の順調な出荷と球状溶融シリカフィラーの数量増となり増収増益となった。ライフイノベーション部門では、インフルエンザワクチン、検査試薬は順調な出荷となったが、新製造棟の償却費や研究費負担が増加し減益となった。
次期業績見通しは、石化製品のスプレッド縮小、労務費他の固定費や研究開発費負担増はあるものの、電子先端製品をはじめ全セグメントでの数量増を見込んでおり、スチレンモノマーの定修負担減などにより、売上高は過去最高の4000億円、営業利益は過去最高と同水準の300億円、経常利益は過去最高の280億円の増収増益を見込んでいる。
売上高は全セグメントで数量増、価格面ではクロロプレン、石化製品の値上げ実施が寄与するほか、営業利益については数量増効果が石化製品のスプレッド縮小や先行投資負担増をカバーし、エラストマー機能樹脂では販売価格差が200億円、27億円の増益を見込んでいる。
次期設備投資額は300億円を計画。米国のクロロプレン工場の生産性改善投資(20億円)、ライフイノベーションでの新規事業、水力発電所の建設投資などに充当する。
クロロプレンについては、世界的に需給がタイト化する中、米国市場での需要も回復基調にあることから、米国のクロロプレン工場の生産性向上と品質改善のための設備投資を実施し、17年度に同子会社の黒字転換を図る。
また、同社は現在、次期経営計画(2018年度~2022年度)を策定中だが、この中で基盤事業のスペシャリティー化を成長戦略のひとつとして掲げており、クロロプレン事業では新重合技術により、現行のクロロプレンでは対応できない自動車向けの高度な耐久性が求められる領域への新グレードの開発を加速させている。同社ではヘルスケア、環境・エネルギー、高付加価値インフラのスペシャリティ―事業の成長と合わせ、基盤事業においてもスペシャリティーグレードの割合を増やしていくことで、営業利益に占めるスペシャリティ比率を現行の6割から2022年度には9割までに拡大させる計画でいる。