合成ゴム・化学メーカーの2017年3月期決算から、合成ゴムとエラストマー事業の現況をピックアップした。期後半からの原料であるブタジエン価格の上昇を背景とした製品価格上昇により期の後半で採算が改善し、概ね営業利益は前期を上回った。
◆JSR
国内タイヤ向けが不調だったが、輸出が増加したこと及びタイの合弁会社JSR BSTエラストマー(JBE)での低燃費タイヤ用SSBRの第1期設備が高稼働となるなど、SSBRの販売量が大きく増加したことで、売上高は前期を上回った。また、営業利益については、期の前半に供給過剰によるエラストマー製品市況が低迷し、売買スプレッド(販売価格と主要原材料価格の価格差)が悪化したが、原料であるブタジエン価格の上昇を背景とした製品価格上昇により期の後半で採算が改善したこと、及び販売量の増加があり、前期を上回った。
◆日本ゼオン
合成ゴム関連では、特殊合成ゴムの国内販売が堅調に推移したものの、国内タイヤメーカー各社の稼働率が低調だったことに加え海外市況価格悪化の影響も受けたため、全体の売上高は前期を下回ったが、営業利益は前期を上回った。
◆三井化学
合成ゴム関連では、特殊合成ゴムの国内販売が堅調に推移したものの、国内タイヤメーカー各社の稼働率が低調だったことに加え海外市況価格悪化の影響も受けたため、全体の売上高は前期を下回ったが、営業利益は前期を上回った。
◆住友化学
石油化学品や合成樹脂は原料価格の下落により、市況が下落した。また、千葉工場の石油化学事業再構築の影響により、石油化学品の出荷も減少した。更に円高による在外子会社の邦貨換算差の影響もあった。
◆旭化成
高機能ポリマー事業では、低燃費タイヤ向け合成ゴムやエンジニアリング樹脂の販売数量が増加したが、各製品において円高の影響を受けた。
◆宇部興産
ナイロン樹脂の出荷は食品包装フィルム用途を中心に堅調に推移したが、原料価格上昇の影響を受けた。ナイロン原料のカプロラクタムは、中国での供給能力過多の状況は継続しているが、市況は回復傾向で推移し、海外ではアンモニアなど副原料の価格低下も寄与した。アンモニア製品の出荷は、工場の定期修理を実施したこともあり、低調。ポリブタジエン(合成ゴム)はエコタイヤ用途を中心に出荷は概ね堅調だったが、原料価格上昇の影響を受けた。
◆デンカ
クロロプレンゴムは、円高により手取りは減少したが、同社青海工場に加え、前年度後半に事業を開始した米国の子会社デンカパフォーマンスエラストマー社が年間をとおして順調に稼動し、販売数量が増加し増収となった。スチレンモノマーやABS樹脂、シンガポールの子会社デンカシンガポール社のポリスチレン樹脂等は、出荷は順調に推移したが、原材料価格の下落に応じて販売価格を見直ししたため減収となった。
◆東ソー
クロロプレンゴム及びクロロスルホン化ポリエチレンは、海外需要が堅調なことから出荷は増加したが、円高に伴い輸出価格は下落した。
◆クラレ
熱可塑性エラストマー「セプトン」、液状ゴムは数量が伸長し、順調に推移した。なお、一部銘柄で原燃料価格高騰に合わせ価格調整を行った。
◆信越化学工業
シリコーンは、国内では、化粧品向けや車載向けの出荷が好調に推移した。海外では、汎用品が期前半に市場価格低迷の影響を受けたが、米国や中国、東南アジア向けの機能製品の出荷が堅調だった。
◆ダイキン工業
フッ素樹脂は、国内・アジアの半導体関連需要は堅調に推移したものの、為替が円高に振れたことに加え、米国市場における競合他社や中国生産品の低価格販売およびLAN電線市場での競争激化の影響もあり、フッ素樹脂全体での売上高は前期を下回った。また、フッ素ゴムについては、世界各地域で自動車関連分野での需要が堅調であったものの、同様に為替の影響が大きく、売上高は前期を下回った。