【コラム連載シリーズ】世界のゴム事情18 フィリピン(下) 加藤進一

2017年07月10日

ゴムタイムス社

フィリピン経済と今後

 前回はフィリピンのゴム産業についてお伝えしました。今回はフィリピン国内の現状について説明します。

 フィリピンは人件費が安いこと、さらに人件費があまり上昇していないことが最大のメリットです。現在ワーカーの賃金はおよそ月3万円、よって上海、タイより安いくらいです。ベトナム、インドネシアが今後賃金上昇するとフィリピンの方が安くなるかもしれません。フィリピンの国民性かもしれませんが、ワーカーは勤勉で敬虔なカトリック信者が多いのです。経験豊かな技術者や上級管理職も多く、その人材の豊富さはインドネシア、ベトナムよりよいと考えられます。賃金上昇率も年5%以下でほとんど物価上昇率と同じです。

 またワーカーや現地幹部と英語でコミュニケーションできることもメリットです。工場内部の表示も英語でOK。フィリピンには製造業だけでなく、世界の英語圏のコールセンター、電話ご相談窓口の会社がたくさんあるそうです。時差を無視すれば、フィリピンで世界中からの電話対応ができるのです。

 フィリピンの人は世界中に出稼ぎにでています。その仕送り額がフィリピンのGDPの10%にもなるそうです。フィリピン航空の就航先を見ると、中近東にたくさん便を飛ばしています。なるほど私が今年3月に出張で行ったドバイの取引先の事務所もフィリピン人の女性だけでオフィスを運営していました。中近東の建設現場にもたくさんのフィリピン労働者が行っています。

 私はこの3月初めにフィリピンのセブに出張し、空港近くの経済保税特区にあるゴム会社2社を訪問してきました。この保税工業団地には日系工場は70社もあり、そのほとんどが材料輸入、製品をすべて輸出という、組み立て加工の特化した工場です。豊富な安い人件費を使い、ここから世界中に輸出するというパターンです。この特区では法人税が、生産品の売上総利益(工場製造原価を引いたもの)の5%で、特別な特恵税制になっています。最近は米国トランプ大統領の在米フィリピン人を減らす動きや、フィリピンのドゥテルテ大統領の強気な指揮権の影響でフィリピン通貨ペソがUS$に対して弱くなってきており、そのためフィリピンからの輸出は採算が向上しており、これも日系会社にとってはありがたいとことです。

 今回宿泊したホテルで、ロビーで取引先の人と待ち合わせしていたら、急に警備が強化され、ホテルの幹部が全員勢ぞろい

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