JSRは9月28日、NTT・アクセンチュアと、次世代型の「スマートコンビナート」の実証プロジェクトを、JSR千葉⼯場(千葉県市原市)で開始したと発表した。コンビナートに拠点を構える企業が相互連携して生産性・安全性向上を図るもので、政府も提唱しているコネクテッド・インダストリーズの実現を目指す。
今回の実証では、暗黙知とされてきた熟練技能者の優れた技術やノウハウを、デジタル技術を活用して継続的に形式知化し、活用する体制を構築・検証する。
具体的には、JSR千葉⼯場で熟練技能者が化学製品の生産プロセスで⾏っているプラント運転管理や保全業務に関して、映像や音声などの非構造データをセンサーと無線で自動収集し、分散制御システム(DCS:DistributedControlSystem)など機械設備からのデータと組み合わせて分析できる基盤を構築する。
また、機械学習アルゴリズムに基づいた適切な判断を、リアルタイムにオペレーターに提示できるソリューションも開発し、次世代型のスマートコンビナートに求められる機能や基盤の実証を⾏う。
3社は、JSRの運転管理・保全業務に関する知⾒、NTTアドバンステクノロジなどNTTグループが有するAI技術「corevo」などの先進技術、アクセンチュアのアナリティクスとインダストリアル・インターネット・オブ・シングス(Industrial Internet of Things)領域でのノウハウや、国内外で有する化学業界の業務実績など、各社の強みを融合させて、今回の実証を⾏う。
スマートコンビナート実現のためには、様々な企業や⾏政などが相互連携してオープンイノベーションを推進することが重要で、今回の3社による実証はこうした考えに基づくもの。
化学業界では、経済産業省が中心になってIoTを活用したスーパー認定事業所(⻑期連続稼働)の取り組みが始まっている。一方で、連続安定稼働と熟練技能者の引退に伴って生じると考えられる「現場⼒低下」が懸念されおり、こうした課題の解決に貢献するデジタル技術は、防爆対応などの観点から導入が遅れている。
こうした状況を踏まえ、3社は化学業界におけるデジタル技術の有用性を評価・検証し、⼯場の安全性や生産性の向上に資するデータを有機的に連携させる、スマートコンビナートの実現を目指すことにした。