横浜ゴムは10月23日、マテリアルズ・インフォマティクスによるゴム材料の開発技術を確立したと発表した。
この技術は、同社が革新的なゴム材料設計の発想を得るために研究を進めてきたシミュレーション技術と、実際のゴムを使った設計・加工、分析・計測の研究結果から得たデータを統合し、さらにAI(機械学習)による情報・知識探査を導入したもの。これにより、今までにない高機能なゴム開発の精度とスピードを、飛躍的に高めることが期待できる。
タイヤの性能には、ゴム材料となるポリマー(ゴム)とカーボンブラックやシリカなどの微粒子フィラーの、分散状態や大きさや分量といった複雑な微細構造が大きく影響する。
同社は一昨年、多目的設計探査シミュレーション技術を開発し、微細構造を設計因子とした広大な設計空間での仮想的なゴム材料のモデル化と、弾性率やエネルギーロスなどの力学特性の予測シミュレーションができるようになっていた。
今回の新技術では、AIを使用してこの膨大なシミュレーション結果(設計因子と特性値のデータ)を探索することで、求める性能を実現するために重要となる微細構造の設計因子を、客観的かつ定量的に短時間で導き出すことを可能とした。
また、実際のゴム材料の設計・加工パラメータや分析・計測で得られた結果を利用することにより、材料探索の精度を大幅に向上し、材料開発に必要な試作工数を削減できる。
さらに今回、新たに粗視化分子動力学シミュレーションを導入することにより、設計因子が力学特性に影響するメカニズムも解析可能となり、今後、新たな開発アプローチの発想を得ることも期待できる。
新技術を活用して、転がり抵抗が低く、摩耗しにくいという相反するゴム性能を目標とし検証したところ、フィラーの半径はある閾値より小さく、その界面に形成されるバウンドラバー層は、ある閾値より薄い方が好ましいことがわかった。
また、粗視化分子動力学シミュレーションの結果、フィラーの半径が小さいと高弾性になり、バウンドラバーが薄いとエネルギーロスが小さくなるメカニズムも見出すことができた。
マテリアルズ・インフォマティクスとは、AIなどの情報科学を投入して未知の材料の機能を推定し、新材料や代替材料を効率的に探索する手法。これまでの材料探索は研究者の経験と直感に基づいて行われていたが、それを遥かに凌ぐ速度で合理的に求める特性を持つ材料を発見することができる。
日本でも国家プロジェクトである「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」などで研究が進められているほか、米国や欧州、中国などでも国を挙げてプロジェクトが推進されている。