ゴムとゴム製品のISO規格を審議する技術会議「ISO/TC45国際会議」で、このほど気象観測用ゴム気球の規格化について合意し、発効されることになった。規格化に当たっては、作業部会「SC4/WG5」の国内委員会のメンバーの尽力によって、日本メーカーの規格(モールディング製法)がISOの規格として盛り込まれることになり、日本にとって有利な規格化がなされることになった。
ISO/TC45/SC4/WG5では、5年ほど前に気球のISO規格の審議を開始した。気象観測用ゴム気球には大きく分けて、モールディング製法とディッピング製法の2種類がある。当初の提案ではディッピング製法が規格候補として挙げられていた。
これに対し、ISO/TC45国際会議の国内委員会では、気球の専門家である気球製作所の豊間清社長にラテックス分科会への出席を要請。さらに、気象観測用気球の主要ユーザーである気象庁の関係者に、豊間社長が分科会への出席を依頼し、日本が審議に臨む体制を整えた。
気象観測用ゴム気球は天然ゴムラテックスから作られる特殊な製品なので、ゴム関係者でも、どのように製造され、どこでどのように使われ、ユーザーが何を求めているかを知っている人は少ない。
このため、分科会では豊間社長がメーカーの立場から、気象庁の関係者がユーザーの立場から情報提供を行うとともに、意見を述べた。さらに審議が始まってからは、他国との交渉を有利に進められるよう、他国の提案で日本の業界にとって不利益となる箇所の削除や訂正、表や文言の追加などを日本が提案した。
審議を通じて日本は、モールディング製法はディッピング製法に比べて高性能であること、世界気象機関(WMO)も高高度の気象観測にはモールディング製法が向いていると認めていることなどを訴え、最終的に両製法が併記される形で規格化されることになった。
今回、モールディング製法が規格に盛り込まれたことで、例えば、気象庁などが気象観測用ゴム気球を調達する際、他国メーカーに配慮することなく、日本の高品質な製品を選ぶことが可能になるという。
なお、日本はSC2(試験規格)のチェアマンとセクレタリーのポストを確保しているほか、複数のSC/WGのコンビナーを務めるなど、ISO/TC45の審議に関して豊富な経験を持っている。こうした経験が、今回のモールディング製法の規格化に当たって生かされたと言えるだろう。