▼タイヤ各社が6年ぶりに値上げ
タイヤの主要原料である天然ゴム価格の高騰に加え、合成ゴムやカーボンブラックなど石油化学関連の原材料も高止まりしていたことを受けて、タイヤ各社は6年ぶりに値上げを実施した。
最初に横浜ゴムが2月28日に、出荷価格の4月1日からの値上げを、次いでクムホタイヤが3月8日、やはり4月1日からの値上げを発表。その後、ブリヂストンが3月28日に夏タイヤ・チューブ・フラップを6月1日、冬タイヤは9月1日に値上げすると発表すると、東洋ゴム工業、ピレリジャパン、日本ミシュランタイヤが続き、住友工業が4月5日に発表したことで、国内外の主要メーカーの値上げがほぼ出揃うことになった。
乗用車用の値上げ幅は、横浜ゴムの夏タイヤが6%、クムホは平均7%、ブリヂストンは夏タイヤが6%、東洋ゴムのトーヨータイヤは5・5%、ニットータイヤは最大10%、ピレリは平均6%、日本ミシュランは5%、住友ゴムは夏タイヤが6%となっており、ニットータイヤを除けば、6%前後に収まっている。
▼ゴム企業の新卒採用者数が大幅に増加
本紙がゴム企業とゴム関連企業に対し、17年度の新卒採用状況に関するアンケート調査を実施したところ、昨年も回答のあった22社の新卒採用者数は1124人で、昨年に比べ106人増えたことが分かった。回答のあった26社の新卒採用者数は1143人だった。
米国のトランプ政権の政策に不透明な部分はあるものの、国内の景気が回復の兆しを見せる中、グローバル化に対応するための人材確保もあって採用が増加したと見られる。また、女性の採用数は220人で22社の比較では23人増えている。
17年度の採用状況は、高卒の技術系・事務系を分けていない横浜ゴムの65人を除くと、技術系が820人、事務系は258人となった。最終学歴で見ると、大学院卒が342人、大卒が283人、短大・高専・専門学校卒が25人、高卒が493人。現業部門の技術系高卒者が最も多く、次に高度な専門知識を持つ大学院卒が多いという傾向は変わっていない。
▼上場ゴム企業の17年3月期は減収が過半数に
JSR・日本ゼオンの合成ゴム大手2社を含む主要上場ゴム企業22社の17年3月期決算は、円高の影響で増収企業が前年同期の14社(64%)から10社(45%)に減少。利益面でも円高の影響もあり、営業増益企業数が17社(77%)から15社(68%)に減少した。増収営業増益企業数についても、11社(50%)から7社(32%)に減少しており、円高の影響の大きさを示している。
22社合計の売上高は3兆3003億8000万円で同一企業との前年同期比2・0%減、営業利益は2182億2000万円で同0・7%減、経常利益は2345億7500万円で同0・9%増、当期純利益は同1・6%増となった。
増収企業数は前期に比べ4社減り、対象機企業の半数を割った。海外事業が好調で現地通貨ベースでは増収になったものの、円換算で減収となる企業が多かった。
営業利益については、増益企業数が前期から2社減ったものの、7割近い企業が増益となった。為替の影響はあったものの、原材料であるナフサ・ブタジエン・天然ゴムの価格が低位で推移したことがプラスに作用した。
▼原材料の値上げ続く
原油・ナフサ価格、物流コストや電力料金などのユーティリティコストの上昇により、原材料メーカーでは値上げが相次いだ。さらには、アジア市場での需要増による需給のタイトさも加わり、再値上げ、あるいは値上げ幅を修正する企業もあった。
本紙が把握している限りでは、JSR、日本ゼオン、大洋塩ビ、ダイキン工業、住友化学、クレイトンポリマージャパン、ダウ・ケミカル日本、東ソー、カネカ、クラレ、デンカ、東海カーボン、信越化学工業、昭和電工、旭化成、三菱ケミカル、アランセオ、BASF、独ランクセス、宇部興産、クラレプラスチックス、ポリプラスチックス、独ワッカー、旭化成ワッカーシリコーン、日本ポリエチレンが値上げを実施した。
このうち、JSRは合成ゴム・エマルジョン製品を2月1日納入分から、日本ゼオンは全てのブタジエン系ラテックスを2月6日納入分からドライキロ当たり65円以上値上げしている。
▼冬タイヤ商戦に6社が新製品投入
今冬のタイヤ商戦に6社がスタッドレスタイヤの新製品を投入した。
日本ミシュランタイヤは、乗用車用「Xアイス3プラス」と商用車用「アジリスXアイス」、日本グッドイヤーは新しいパターンデザインと極小シリカのコンパウンドを採用した「アイスナビ7」を発売した。
また、横浜ゴムは基本コンセプトである「氷に効く」「永く効く」「燃費に効く」に、第4のベネフィットとしてウェット性能を新たに追加した「アイスガード6」、ブリヂストンは新開発の「アクティブ発泡ゴム2」と「非対称パタン」などを採用した「ブリザックVRX2」、東洋ゴムはハイト系車両専用スタッドレスタイヤ「ウィンター・トランパスTX」の販売を開始した。
一方、住友ゴム工業はダンロップのスタッドレスタイヤ「ウィンターマックス02」にCUV対応サイズを追加するとともに、タクシー専用耐摩耗性能重視スタッドレスタイヤのダンロップ「ウィンターマックスTS―01」を投入している。
▼ゴム相場がほぼ4年ぶりに300円台に
1月の東京ゴム相場の当限終値は、大発会の271・4円から始まり、先限とほぼ同水準でゆるやかに上昇し、2013年3月以来3年10ヵ月ぶりに300円の大台に乗せた。
16日に終値が308・5円を記録した後は、天然ゴム原産地での天候不順等が報じられて足下の需給ひっ迫感が増すと、先限との逆ざやが鮮明となり、以後は300円台を保ったまま推移。その後さらに急騰し、30日には終値の月間最高値(終値)となる367円ちょうどをつけた。
先限終値は271円ちょうどでスタートして、やはり3年10ヵ月ぶりに300円の大台に乗せた。26日発会の新甫17年7月限は312・6円という高い水準からのスタートとなり、30日には月間最高値(終値)の351・4円を付けた後、31日に331・3円をつけて大引けを迎えた。
その後は上昇と下降を繰り返し、11月の当限終値は183・6円を付けて納会、先限終値195・7円で大引けを迎えている。
▼住友ゴムがスポーツ事業を強化
住友ゴム工業はスポーツ事業を強化するため、海外ダンロップ商標権などを買収するとともに、グループのスポーツ事業を統合することにした。
海外のダンロップ商標権については、英国のスポーツ・ダイレクト・インターナショナル社から、ダンロップブランドのスポーツ用品事業・ライセンス事業と併せ買収する手続きが4月に完了した。
事業の買収は、住友ゴムとそのスポーツ事業子会社であるダンロップスポーツが共同で設立した合弁会社のダンロップインターナショナルが実施。買収したスポーツ用品事業とライセンス事業をダンロップインターナショナルが運営することになった。
その後、8月には住友ゴムを存続会社、スポーツ事業子会社のダンロップスポーツを消滅会社とする吸収合併を行うことを発表。併せてダンロップスポーツインターナショナルも吸収合併することが示された。
▼日経平均上昇を背景にゴム関連株も上昇
米国経済好調や円安などを背景に、日経平均株価は4月以降、上昇基調で推移。6月には2万円、10月には21年ぶりに2万2000円を超え、11月10日には2万3000円台に突入した。10月には16連騰となり、最長記録を更新した。
こうした状況を受け、タイヤ4社は10月末にそろって年初来高値を更新。その後、ブリヂストンは5605円、住友ゴム工業は2219円、横浜ゴムは2586円と、さらに高値を更新した。
また、合成ゴムや自動車用・産業用ゴムなどゴム関連企業の株も10月から11月初旬にかけて急騰。11月10~16日には、NOK・西川ゴム工業・ニチリン・朝日ラバー・JSR・日本ゼオン・バンドー化学・三ツ星ベルト・藤倉ゴム工業・東海カーボン・アキレスが年初来高値を更新した。
▼ニッタが国内で企業・事業を続けて買収
ニッタは中長期経営計画「V2020」で掲げた「新事業・新製品創出」の実現に向け、浪華ゴム工業と東洋ゴム工業グループの化工品事業を買収することになった。
浪華ゴムは医療用ゴム製品をはじめ、プラスチック製医療機器、工業用ゴム製品などを製造している。両社の技術プラットフォームは近く、研究開発や生産技術分野で互いにシナジー効果を期待できることから、ニッタは浪華ゴムの株式を100%取得して子会社化した。
東洋ゴムの化工品事業については、東洋ゴム子会社の東洋ゴム化工品が設立する新会社に、対象事業を継承させた上で、新会社の株式を37億円(概算値)で買収する。
同事業には、鉄道車両用部品、産業用ゴム製品、ホース製品、防水資材等が含まれるが、免震ゴムデータ偽装で問題となっている建築用免震ゴム事業は含まれない。
▼「ZSエラストマー」が営業開始
日本ゼオンと住友化学の溶液重合法スチレンブタジエンゴム(S―SBR)事業の統合会社「ZSエラストマー(ZSE)」が、4月に営業を開始した。
ZSEは両社のS―SBR事業に関する販売・研究開発機能を受け継ぐ。また、シンガポールにある両社の子会社が製造する製品についてもZSEが購入し販売を行う。
両社の技術融合による新製品開発やさらなるコスト競争力の強化、安定供給の確保等によるシナジー効果の最大化を図ることで、S―SBR事業の拡大を図る。
ZSEは日本ゼオン本社内にある。資本金は4億5000万円で、出資比率は日本ゼオンが60%、住友化学が40%。