日立造船は12月13日、機能性材料のトチュウエラストマーの特徴である耐衝撃性などの機能を利用した商品として、ゴルフ用品総合メーカーのキャスコが新たに製造・販売するゴルフボール「バイオスピン」の素材に採用されたと発表した。同社のトチュウエラストマーを用いたスポーツ用品が市場に出るのは初めて。
キャスコはゴルフボールの新商品開発で、スピンがかかって止まる楽しさを追求し、従来よりも高い耐久性とスピン性能を持つ素材を探し求めていた。
一方、日立造船は1986年から中国原産の落葉樹であるトチユウを用いた商品開発に取り組んでおり、近年はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成を受けながら、大阪大学との産学連携を活用して新しい機能性材料としての展開を図ってきた。
今回はキャスコの新商品開発の二ーズに、トチュウエラストマーが持つ優れた耐衝撃性と引張強度であるシーズがマッチングし採用された。同社は舞鶴工場でトチュウエラストマー骨を生産し、キャスコへ供給する。
トチュウエラストマーは、落葉樹のトチュウ(杜仲茶の木)から抽出・精製したトランス型ポリイソプレンで、分子量が100万を超えるバイオポリマーだ。
主な性質として①バイオマス(植物)由来②疎水性の軟質ポリマー③平均分子量100万以上・狭い分子量分布・直鎖構造④優れた耐衝撃性・引張特性⑤低温可塑性⑥細胞毒性・皮膚感作性がなくアレルゲンフリー―という特徴がある。
また、架橋により形状記憶機能の付与も可能。これらの性質から、スポーツ用品や医療用品など衝撃に対する耐久性が求められる用途への展開が期待されている。さらに、他のポリマーへの添加により、各種ポリマー単独では出せない物性を持つ新しいフレンドポリマーの創製が可能となっている。