「環境技術強化」、「モノづくり革新」、「新規顧客開拓」の3点を経営戦略に挙げ、自動車新商品開発センターで新製品開発を進める住友理工。松井徹社長に⒘年を振り返ると共に18年度の経営課題を聞いた。
◆17年を振り返って。
自動車用品は、米国では自動車販売が弱含みで前年より少し下がっているが、日系自動車メーカーの生産が増加した中国、市場回復が続く欧州、市場が回復に転じた南米でそれぞれ販売数量が増加した。
一般産業用品は、インフラ分野では中国でのインフラ投資増加により、建設・土木機械向け高圧ホースや鉄道車両用防振ゴムの売上が増加。住環境分野では住宅用制震ダンパーが増収となった。
主な取り組みとしては自動車部門ではドイツ『国内』の研究開発棟をドイツ『国内』で移転・改築した。
日本の技術の横展開と、北米・中国・日本の各技術センターとの連携により、世界トップのグローバル技術開発体制を構築し、新技術開発をスピードアップさせてきた。販売面でもフランクフルトの第2グローバル自動車営業本部と協力し、主要顧客に密着した技術・営業サービス体制を構築した。
◆20V経営戦略での成果は。
自動車部門では新規の顧客開拓、環境規制に対応した新製品開発に注力してきたが、進んではいるもののスピードは遅くマイナス点の評価だ。自動車新商品開発センターで自動車用の防水コネクターシール材(シリコーンゴム)を開発しており、一般産業用では商品化が進んだ体圧検知センサー「スマートラバー(SR)センサ」を活用した「SRソフトビジョン」シリーズや胸骨圧迫訓練評価システム「しんのすけくん」などの健康・介護関連の事業拡大が図れた。
インフラ分野でも中国・インドで建設・土木機械向け高圧ホースの需要が堅調だ。ガソリン車での燃料用ホースでは、中国での環境規制強化に対応した我々が持っている技術力を生かせる状況にある。エンジンの小型化によるダウンサイズイングでは振動が大きくなるなどの新たな技術対応が求められるため、我々の製品への要求も高まっている。一方でEVや自動運転によって、SRシートセンサやハプティクスなどの新しいニーズも生まれている。
◆18年度の需要見通しと経営課題について。
外部環境変化を踏まえ、環境配慮型製品(燃料電池車向けセル用ガスケット、窓用高透明遮熱・断熱フィルム、ドライバーモニタリングシステムなど)の開発による「環境技術強化」、技術の進歩が著しいIotや情報処理技術などを積極的に利用し、投資・仕掛・リードタイムを2分の1以下とし、生産性2倍、災害ゼロを目指す「モノづくり革新」、既存事業においては、自動車新商品開発センターを活用し、グローバルマーケットにおける拡販活動や、自動車以外の事業についての海外展開を積極的に進め、新規顧客を開拓していくという「新規顧客開拓」の3点を経営戦略に挙げている。
新規顧客開拓では北米市場での本格展開を見据え、鉄道車両用部品の生産を日本、中国、フランスに米国を加えた、世界 4極生産体制の確立を目指す。
建設機械用高圧ホースでは国内、中国、インド共にフル生産が続いており、能力増強への投資についても検討課題だ。特に、大きく回復したのは中国のインフラ需要。中国が推進する一帯一路政策により今後もインフラ関係の投資は続くものと予想されている。
また、溶剤を使わない水による手法(水現像)で環境負荷を低減できるフレキソ印刷版については、新たな事業展開として、フレキソ事業の生産拠点をイタリア・トリノに設け、2018 年秋より稼働を始める予定だ。
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