日本化学会 化学遺産に合成ゴム資料が認定

2018年03月15日

ゴムタイムス社

 公益社団法人日本化学会は3月8日、第9回を迎える化学遺産に「認定化学遺産第044号 グリフィス『化学筆記』およびスロイス『舎密学』」、「認定化学遺産第045号 モノビニルアセチレン法による合成ゴム」「認定化学遺産第046号 化学起業家の先駆け 高峰譲吉関係資料」の3件を認定したと発表した。

 日本化学会では、化学と化学技術に関する貴重な歴史資料の保存と利用促進を目的として、化学遺産委員会(委員長・植村榮京都大学名誉教授)を設置し、活動を行っている。化学遺産認定はこの活動のひとつで、歴史資料の中でも特に貴重なものを認定することによって、文化遺産、産業遺産として次世代に伝えるとともに、化学に関する学術と教育の向上、化学工業の発展に資することを目的としている。

 3月21日15:40より日本大学理工学部船橋キャンパスで開催する第98春季年会表彰式で認定証を贈呈する。

 このたび、化学遺産に認定された 『モノビニルアセチレン法による合成ゴム』は、古川淳二氏が保管し、1982年に京都大学、東京農工大学に寄贈した工業化試験資料で、日本での合成ゴム黎明期を示す資料として貴重であるため化学遺産として認定された。

 第一次世界大戦中にドイツは世界で初めての合成ゴムとしてメチルゴムを工業化した。天然ゴムは生産地が東南アジアに限られるのでゴムは戦略物資として極めて重要であり、合成ゴムの研究は世界各国で続けられた。

 この結果1920年代末から30年代に現在も大量に生産されるSBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)などの優秀な合成ゴムが発明された。
 工業化においては、その主原料であるブタジエンの合成法が重要であり、当時はアセチレンや発酵エタノールを原料とする様々な製法が研究された。

 日本では商工省大阪工業試験所が1938年にアセチレン原料アルコール法ブタジエンの製法(ソ連で開発)を完成させ、1942年に日本化成工業黒崎工場でNBRが工業化された。

 三井鉱山もアセチレン原料アルドール法ブタジエンの製法(ドイツで開発)を確立し、1944年にNBRの工業生産を開始した。

 一方、京都大学工学部の古川淳二はモノビニルアセチレン法を発明し、1942年に京都大学化学研究所で工業化試験に成功した。

この設備はその後住友化学工業新居浜工場に移されNBRの工業生産に使われた。

 しかし第二次世界大戦後、日本での合成ゴムの研究・生産は連合軍によって長らく禁止されたため、日本での戦前、戦時中の合成ゴム関係資料はほとんど失われた状態だった。

 また、同春季年会期間中の21日9:30から化学遺産委員会および化学史学会主催で「第12回化学遺産市民公開講座」を開催し、今回認定された3件の歴史的価値などについて講演をする。なお、同講座は市民公開講座であるため、誰でも無料で参加が可能。事前登録は不要で、参加希望者は直接会場に来場のこと。

 

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