化学技術の展示会「ケミカル マテリアル ジャパン2018」が5月17~18日、横浜市のパシフィコ横浜で開催された。
初回となる今回は「化学が安全な社会をつくる」テーマに化学技術関連の71社が参加し、ゴム企業関連も複数出展した。
化学関連全般にわたる展示会がほかに少ないことから、初日の開場直後から賑わいを見せた。
◆大阪ソーダ/ダイソーエンジニアリング
大阪ソーダは、主力の特殊合成ゴム製品をパネルで展示した。
エピクロルヒドリンゴムの「エピクロマー」は、耐油性が高く、車の燃料ホースやコピー機のロールなどに幅広く実用化されている。
耐熱性をより高めたアクリルゴム「ラクレスター」は、ターボチャージャー車の燃料ホースなどに用いられる。
自動車の排ガス規制が世界的に厳しくなる中、エンジンの小型化、高性能化に寄与するとアピールすると同時に、新しい用途への応用も期待した。
共同で出展したダイソーエンジニアリングは、大気汚染防止法の改正に対応した排ガスの湿式水銀処理プロセスを紹介し、実証設備にて顧客テストも可能だと提案した。
◆川口化学工業
川口化学工業は、新開発の機能性添加剤をパネルで紹介した。
展示会で初展示となるビスマレイミドモノマー「IPBM」は、従来製品の着色や変色の欠点を解消した樹脂に色が着かない添加剤で、シリコーンやEVAなどの樹脂に添加することで光学系の用途に推奨される。
同じく初展示のチオール系接合材「ExS」は、チオール特有の臭いがなく無臭で、耐水性も高いことから、エポキシ系接着剤の硬化剤としての利用に向く。
架橋剤「アクター」シリーズに新たに加わった「IPSH」など3種のトリアジン系硬化剤は、反応性が高く比較的容易に低溶出性なゴムが得られるのが特徴で、安全性が高く医療製品に利用可能なほか、金属の表面処理剤としても利用できる。
安全衛生対応の有機ゴム薬品「アクセル PUR」は、ETUの75%の添加量で代替可能な加硫促進剤として提示した。
◆JSR
JSRは、水系塗料用フッ素樹脂「シフクリア」と熱蓄熱材「カルグリップ」を紹介した。
「シフクリア」は、フッ素樹脂とアクリル樹脂をナノサイズでアロイ化した水系材料で、耐候性、耐汚染性、リコート性に優れ、建材や構造物塗料、遮熱塗料として実用化が進んでいる。会場では、製品に水をかけ水滴が残らない様子を実証したほか、タンクへの塗装実例を写真で示した。
「カルグリップ」は、温調設備なしでの精密温度管理が可能で、摂氏2~8度での冷蔵管理が必要な医薬品や血液、治験薬の定温輸送で採用が広がっている。同製品の粉末タイプも展示し、蓄熱物質を硬質樹脂で覆ったコアシェル材料として、樹脂などとの混合で蓄熱性能付与ができる点を訴求した。また、太陽エネルギーの蓄熱利用で省エネにも有効だと説明した。
◆デンカ
デンカは、同社のクリーンエネルギーの活用とリサイクル事業について紹介し、持続可能な社会発展に貢献する製品を中心にパネルを用意した。
球状アルミナは、独自の高温溶融技術により開発した高球形度のアルミナで、優れた熱伝導性を持つため、樹脂・ゴムの高熱伝導性付与や表面硬度向上を目的としたフィラーに最適とされる。その放熱効果からハイブリッド車のバッテリーで需要が高まっているほか、5Gの携帯電話基地局で電波発生の際の放熱用途などに実用化されている。
シリコーン樹脂と配合された放熱スペーサーも紹介した。発熱部と冷却部の隙間に挿入することで放熱効果が得られるため、リチウムイオンバッテリーの冷却機構での利用が広がっている。
◆東ソー
東ソーは、研究開発で重点分野に掲げる、電子材料、環境に関連するスペシャリティ製品を紹介した。
初公開となる開発中の高速GPC装置は、ポリマーの分子量を計る装置で、従来品より高感度で、ドリフトやノイズを低減し、RIベースライン安定化時間の高速化も実現した。従来品は化学系企業や電子材料メーカー、研究機関などで広く採用実績があり、フルモデルチェンジした新製品の今夏からの展開を目指す。
環境対応型ウレタン発泡触媒「RZETA」は、樹脂の骨格にアミン触媒を取り込むことでアミンの揮発や臭いが消えることから、欧州を中心に自動車内装用途に採用されている。臭いのないシートが車室空間の快適性向上に寄与すると訴求した。
◆日本ゼオン
日本ゼオンは、スーパーグロース法による世界初の量産に成功した、単層カーボンナノチューブ(CNT)の「ゼオナノSG101」とその応用製品に絞って展示した。
単層CNTは、軽く、強く、導電性・熱伝導性が高いのが特徴で、ゴムなどに複合することで耐熱性や強度が増す。
ブースでは、製造過程のシート状のCNTフォレストや、黒い粉末状の同製品のほか、同製品を水と混ぜ合わせた水分散液や、樹脂と複合した樹脂コンパウンドと樹脂フィルム、ゴムと複合したゴムマスターバッチとОリングを陳列した。
また、ゴムとの複合製品に通電してライトを点灯させるコーナーも設け、カーボンブラックより少ない添加量で電導性が生じ、ゴム自体の特性も残ることを説明した。
量産化の目途が立ったことで、エネルギーや高機能材料、エレクトロニクス、構造材料など幅広い分野への応用を視野に入れている。
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