合成ゴム・化学メーカーの2018年3月期決算から、合成ゴムとエラストマー事業の現況をピックアップした。合成ゴムは数量増加とともに販売価格改定などが寄与したことから、各社の売上高、営業利益は堅調に推移した。
◆JSR
主要業界の自動車タイヤ生産は、中国を初めとしたアジア・欧州では前年を上回ったが、日本は前年並みとなった。この結果、エラストマー事業全体の販売数量はやや減少したものの、前期第4四半期に上昇したブタジエン価格を反映した販売価格改定を行ったことで、売上高は前期を上回った。営業利益についても、販売価格改定で採算が改善したことや、第2期設備が稼働したタイの合弁会社での低燃費タイヤ用SSBRの販売数量が増加し、前期を大幅に上回った。
◆日本ゼオン
合成ゴム関連では、国内販売、海外販売いずれも堅調に推移した。ゴムの販売数量では、汎用が20%、特殊も5%のプラス。また、ラテックス関連では手袋向けや樹脂改質用途の販売が堅調に推移。この結果、エラストマー事業全体の売上高、営業利益ともに前期を上回った。
◆三井化学
自動車部品及び樹脂改質材用途を中心とするエラストマーは、堅調な需要に的確に対応した。機能性コンパウンド製品は、主にアジア、欧米での堅調な需要に的確に対応した。以上により、売上高、営業利益ともに前期を上回った。
◆住友化学
石油化学品や合成樹脂は原料価格の上昇により、市況が上昇した。合繊原料やメタアクリルも市況が上昇した。
◆旭化成
高機能ポリマー事業では、低燃費タイヤ向け合成ゴムで交易条件が改善したことや、自動車用部品などに使用されるエンジニアリング樹脂の販売数量が増加したことなどから、同事業は前期比増収、増益となった。
◆宇部興産
合成ゴム事業は、原料ブタジエン価格の上昇に応じて販売価格が上昇し、また国内のタイヤ用途を中心に出荷も概ね堅調であったことにより、増収となった。
◆デンカ
クロロプレンゴムは、資源関連用途での需要回復などによる販売数量の増加や、採算是正を目的とした販売価格の改定により増収となった。また、スチレンモノマーやABS樹脂、シンガポール子会社のポリスチレン樹脂等の販売は堅調に推移した。これにより、同部門の売上高は増収となった。
◆東ソー
ポリエチレン樹脂は国内出荷が増加したことや、ナフサ価格の上昇により国内価格も上昇した。また、クロロプレンゴムは、好調な海外需要にけん引され出荷が増加し、輸出価格が上昇した。
◆クラレ
イソプレン関連では、ファインケミカル、液状ゴムは販売が拡大し堅調に推移したものの、熱可塑性エラストマー「セプトン」は、販売量が減少した。
◆信越化学工業
シリコーンは、全分野・用途で需要が伸びた。製品では、機能製品に加え、汎用製品も全世界で拡販した結果、売上高、利益とも2桁の伸びを見せた。
◆ダイキン工業
フッ素樹脂は、米国市場でのLAN電線用途需要が減少したものの、国内・中国・アジアを中心に半導体関連需要が好調に推移し、フッ素樹脂全体での売上高は前期を上回った。また、フッ素ゴムも、世界各地域で自動車関連分野での需要が堅調に推移し、売上高は前期を大きく上回った。