2018年上半期海外進出企業一覧 2年ぶりに10社以上が進出 7割はアジアに

2018年06月29日

ゴムタイムス社

 今年上半期のゴム関連企業の海外進出社数は10社10拠点となった。海外進出企業が半年で10社を超えたのは16年上半期以来2年ぶりとなっただけでなく、昨年は一度もなかったタイヤメーカーの海外進出も2拠点見られた。進出先では、タイ、中国、インドにそれぞれ2社進出するなど、アジアへの進出が計7社となっている。

 原材料

 ◆宇部興産
 宇部興産は3月19日、同社グループの宇部マテリアルズが、タイ・ラヨーン県にあるウベ・ケミカルズ(アジア)パブリック・カンパニー・リミテッドの拠点内に塩基性硫酸マグネシウム「モスハイジ」の製造工場を建設することを決定したと発表した。
 モスハイジは、自動車の軽量化に寄与する樹脂添加剤で、地球温暖化対策やCO2排出量削減を背景とした世界的な自動車軽量化ニーズの高まりを背景に需要が拡大しており、2012年と2015年の二度の増強工事を経て現在の生産能力は3000t/年となっている。
 モスハイジは現在、山口県宇部市の工場で一極生産しているが、今後も見込まれる需要増や海外顧客である樹脂コンパウンドメーカー等の現地調達ニーズに対応するため、アジアにおける自動車産業の中心であるタイにおいて工場を建設する。
 新工場の設備能力は1500t/年。2018年4月着工、2019年8月完工の予定。生産開始となる2019年9月に、宇部マテリアルズはグローバルで4500t/年の能力を持つことになる。

 ◆三菱ケミカル
 三菱ケミカルは3月29日、成長市場であるASEAN地域とインドにおける機能性樹脂事業の規模拡大に向け、シンガポールに同域内の統括会社を設置すると発表した。
 具体的には、4月1日をもってシンガポールの連結子会社であるアプコシンガポール(以下「APS」)に、ASEAN地域とインドにおける機能性樹脂事業関連グループ会社の戦略的マネジメント機能を担わせ、当該事業の認知度やブランド力の向上を図るとともに、同日付でAPSの社名を「三菱ケミカルパフォーマンスポリマーズアジアパシフィック」(以下「MCPPアジア・パシフィック」)に変更する。
 MCPPアジア・パシフィックの事業内容は、熱可塑性エラストマー、塩ビコンパウンド、機能性ポリオレフィン等の製造と販売、ASEAN地域とインドの域内統括。1997年6月に設立し、資本金は120万SGD(約9600万円)。株主構成は三菱ケミカルが100%となっている。

 ◆東ソー
 東ソーは3月29日、中国・上海市に中国統括会社「東曹(中国)投資有限公司」を3月21日に設立したと発表した。
 現在、同社は中国ではウレタン関連製品と塩化ビニル樹脂の製造・販売会社、同社グループ製品の販売会社など、11社の連結子会社を有し事業を展開している。
 今後も重要な市場である中国で、同社グループの事業をより一層拡大させ、中国グループ会社のガバナンス機能を強化するため、統括会社「東曹(中国)投資有限公司」を設立することとした。
 同社グループでは、新会社設立を通じ、より効率的な事業運営体制を構築し、中国市場における事業基盤を一層強固なものとしていく方針で、今後、中国で事業展開している同社グループの現地法人を順次「東曹(中国)投資有限公司」の傘下に移管することにしている。
 東曹(中国)投資有限公司は、中華人民共和国上海市自由貿易区に本社を置き、資本金は1000万米ドル(東ソー100%出資)、事業内容は中国グループ会社の新規投資、資金管理の統括と管理業務の支援などを行う。

 ◆JSR
 JSRは4月9日、インドにおける合成ゴム等エラストマー製品の営業・マーケティング活動の強化のため、ハリヤナ州に現地法人「JSRエラストマー・インディア・プライベート・リミテッド」を設立し、営業を開始したと発表した。
 2017年12月20日に設立されたJSRエラストマー・インディア・プライベート・リミテッドは、インドのハリヤナ州グルガオンに本社を置き、JSRが99%、JSRトレーディングが1%出資している。事業内容は合成ゴム等エラストマー製品の販売代理で、資本金は1500万インドルピー、代表者は三田村憲作氏。
 インドは現在世界第5位の自動車生産国で、タイヤ向け・自動車部品向けエラストマー製品の需要拡大が見込まれる。また、市場規模の拡大に加えて、自動車排ガス環境規制の強化を背景に、低燃費タイヤ用溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)に代表される高機能製品の需要の高まりも期待されている。
 このため、今回インドに現地法人を設立し、営業・マーケティング活動の現地化によって、エラストマー製品の販売拡大を図ることにしている。

 ◆昭和電工
 昭和電工は4月19日、中国で電池材料事業強化のため、100%出資の販売子会社「昭和電工電池材料(上海)有限公司」を設立したと発表した。
 リチウムイオン電池(LIB)市場は、スマートフォンなどのモバイル用途に加え、世界的な環境意識の高まりによる新エネルギー車の普及で車載用途での需要も急速に拡大している。
 特に中国では、政府支援策を背景として乗用車・商用車ともに電気自動車およびプラグインハイブリッド車の生産・販売台数の伸びが顕著で、LIBメーカーによる積極的な設備投資も進められている。
 これまで同社では、中国における統括会社「昭和電工管理(上海)有限公司」を通じ、中国でのLIB材料の営業活動を行ってきたが、成長著しい中国LIB市場での事業機会を的確に捉えるためには、事業部直下での迅速な意思決定と主要メーカーとのさらなる関係強化、精緻な情報収集が必要と判断し、新会社を設立した。
 新会社は4月10日に設立、資本金は1億円。

 ◆クラレ
 クラレは6月19日、PTTグローバルケミカル社、住友商事との共同出資により、タイにおけるブタジエン誘導品の製造、販売を事業とする合弁会社を設立すると発表した。
 合弁会社「クラレGCアドバンスド・マテリアルズ」は、タイのラヨン県マプタプットにある石油化学コンプレックス内のヘマラ・イースタン工業団地を候補地に、高耐熱性ポリアミド樹脂PA9T、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの製造販売を行う。
 同合弁会社は、タイの首都バンコックに本社を構え、ブタジエン誘導品の製造販売を主要事業とする。資本金は1000万タイバーツ(会社設立時)で、代表者に山本博志氏が着任し、6月20日に設立。同合弁会社に出資するために設立された持ち株会社を通じて、クラレが53・3%、PTTグローバルケミカル社が33・4%、住友商事が13・3%をそれぞれ出資する。
 また、同ブタジエン誘導品の製造敷地内に、クラレ単独でイソブチレン誘導品MPD(3―メチル―1,5―ペンタンジオール)の生産設備も建設する予定で、同製品の製造・販売を事業とするクラレ100%出資会社も設立する。資本金は200万タイバーツ(会社設立時)としている。
 同クラレ100%出資会社の名称は「クラレ・アドバンスド・ケミカルズ(タイランド)」。イソブチレン誘導品の製造販売を主事業とする。

 

 タイヤ・工業用品

 ◆ブリヂストン
 ブリヂストンは4月17日、ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニーと、ブリヂストンの米国子会社ブリヂストンアメリカス・インク(BSAM)が、全米でタイヤ卸売事業を展開する新会社を共同で設立すると発表した。
 両社が設立するのは、タイヤハブ社。出資率は50%ずつで、両社から独立して事業を行う。ジョージア州アトランタに本社を置き、必要な許認可を取得後、2018年半ばに設立予定。両社の卸売網を統合して、タイヤ事業の成長とブランド価値向上を狙う。
 新会社タイヤハブ社は、既存のBSAMとグッドイヤー社の倉庫などを活用して全米各地に80以上の物流拠点を設ける。また、物流ネットワークを補完し、商品の在庫・販売・配送まで一貫したサービスを提供することで、全米のほとんどの販売店に毎日配送することが可能となる。
 乗用車用・小型トラック用タイヤの両社の充実した商品ラインナップを顧客に素早く供給することが可能となり、販売窓口を一本化した。さらに販売店のPOSシステムと統合できるオンラインのポータルを導入することにより、業界最高水準のサービスを目指していく。急伸する大口径プレミアムタイヤの需要増にも対応していく方針。
 幅広い商品をオンデマンドで受注することで、商品の多様化に伴い在庫スペースの確保に苦慮しているタイヤ販売店を支援していく。

 ◆住友ゴム
 住友ゴム工業は5月18日、スロベニア共和国・ロガテツ市のスロベニア工場建設予定地で5月17日に起工式を実施したと発表した。
 同社はスロベニアに医療用精密ゴム部品工場を新設することを2017年8月に発表している。
 起工式には、スロベニアのミロ・ツェラル首相、ズドラウコ・ポチヴァルシェク経済産業大臣、ベルト・メナルド ロガテツ市長ら政府関係者、同社の池田社長、ロンストロフ・メディカル・エラストマー・ディー・オー・オー社のピーター・ウェーバーCOOなど、約30人が出席した。
 ツェラル首相は「高い技術を持った工場の進出は、経済発展、生活の質向上に貢献してくれるものであり感謝する。事業の成功に期待している」と述べた。
 同社は2015年1月に、欧州の大手製薬メーカー向けを中心に、医療用精密ゴム部品を製造・販売するスイスのロンストロフ社を買収し、事業を拡大してきた。
 新工場は約3万平米の敷地に約3400万ユーロ(約44億円)を投じて建設され、生産能力は420t/月となる計画で、2019年4月の生産開始を目指している。
 スロベニア工場の新設により、欧州における医療用精密ゴム部品の生産能力は2016年比で約3倍となる見通しとなっている。

 ◆住友理工
 住友理工は6月8日、自動車用防振ゴムの研究開発・販売子会社、SumiRiko AVS Germany GmbH(略称:SRK―GER、ドイツ・ヘッセン州)で、新設する研究開発棟「SRK―GER R&Dセンター」の起工式を執り行ったと発表した。
 同センターの新設は、世界的な技術革新に寄与し、欧州自動車メーカーを中心とする新たなニーズに応えるため、同社グループがグローバル・システムサプライヤーとして飛躍するロードマップの重要な通過点としている。またセンターでは従来の研究開発に加えて、今後はさらに電動車における内装品の快適性能を高めるシステム開発などにも取り組み、新商品の創出につなげる。
 5月下旬に開いた起工式には、SRK―GER関係者らが出席。同社の松岡勉取締役常務執行役員・防振事業本部長が「我々はこの地を、当社グループの欧州における自動車用防振ゴムのR&D(研究開発)拠点として、さらに発展させていきたい」と挨拶し、棚橋洋昭執行役員・SRK―GER CTOやオラフ・ハーン常務執行役員・SRK―GER CEOが続き、その意義を強調した。
 同センターの延床面積は、開発部門オフィスと試作・初品・試験棟の2棟を合わせて約4700平米で、投資額は約1000万ユーロ。2019年9月に竣工予定となっている。
 同社グループは、自動車用防振ゴムのマーケットリーダーとして欧州自動車メーカーの動きやニーズを的確にとらえ、次世代自動車向けの新商品開発を推し進めるためにも、この新センターの設立を大きな契機として、欧州市場でのさらなる躍進を図っていくとしている。

 ◆ニッタ
 ニッタは6月15日、同社のインドにおける連結子会社Nitta Corporation India Pvt.Ltd.(NCI)で昨年4月より計画を進めていた新工場が完成し、6月12日に開所式を執り行ったと発表した。
 開所式には、NCIマネージング・ディレクターのRavi Swaminathan氏をはじめ、同社の新田元庸代表取締役社長ら役員3人、NCI従業員、顧客を含む約80人が参加。ゲスト来場の際は地元の音楽演奏を交えながら出迎え、続いてインド式ランプの儀式、開運祈願を行った後、テープカットを行った。また式典では多数のゲストより祝辞も届いた。その後、工場内設備の見学会や、NCI役員、マネージャーの紹介などを行った。
 新工場の主な加工品目はベルト製品、ホース・チューブ製品。工場の延べ床面積は約2300平米で、本格稼動時期は今年4月となっている。NCIでは、事業展開するインド市場の需要の高まりに対応するべく、新工場への移転を進めてきた。今後は二次加工機能を強化し、よりタイムリーな納期対応に取り組み、多様な顧客ニーズに応えていくとしている。

2018年上期海外進出企業リスト

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