ミシュランは6月25日、カナダのモントリオールで5月30日から6月1日まで開催された「MOVIN ON 2018」で、タイヤメーカーとして世界の環境問題に取り組む長期的戦略を明らかにしたと発表した。
この戦略の柱は、2048年までに、①タイヤ原材料の80%を持続可能な材質に置き換える、②タイヤのリサイクル率を100%にする、の2点。
1点目のタイヤの原材料については、現在、同社が製造するタイヤは全体の28%に持続可能な原材料が使われており、このうち26%が天然ゴム、ひまわり油、リモネンなどのバイオ由来の材料で、2%は鋼鉄やリサイクルした粉末状タイヤなどのリサイクル原材料となっている。こうした原材料の使用比率を80%まで引き上げ、持続可能なモビリティ社会の実現につなげることにしている。
2点目のタイヤのリサイクル率については、現在の世界全体のタイヤの回収率は70%、リサイクル率は平均50%となっており、「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」のデータでは、18年には世界で10億本の使用済みタイヤ(約2500万t)が発生するとされている。同社は廃棄タイヤの削減と再利用へ取り組みを進め、全てのタイヤにおいて100%のリサイクル率を目指すこととした。
これら2つの目標が達成された場合の潜在的な利益と節減効果は、同社によると、①年間3300万バレルの原油(超大型タンカー16・5隻分)または電力5万4000GWh相当の節約、②平均的なセダン(8リットルの燃料で100km走行)が年間650億km走行できる燃料相当の節約、③ヨーロッパの全て四輪車が225km(総計走行距離2億9100万km)走行できる燃料または全世界の全ての四輪車(12億台と推定)が54km走行できる燃料相当の節約、と試算されている。
目標実現に向け同社は、持続可能なモビリティ社会を促進するための革新的なソリューションの開発と、タイヤ性能改善の継続的な取り組みを進めており、その一環として17年10月に米国高性能微粒子ゴム粉末(MRP)分野の大手製造企業であるリーハイ・テクノロジー社を買収している。
MRPは、原油やゴムに代わる原材料として、ハイパフォーマンスタイヤ、プラスチック、消費財、コーティング剤、シール材、建設資材、アスファルトなど、産業および消費者向け用途で広範囲に利用されていて、原材料コストを最大50%低減し、様々な市場でその性能を発揮する持続可能な原材料となっている。
リーハイ・テクノロジー社は、使用済みタイヤから微細粉末を製造する高度な技術を持つMRP市場のリーダーとして、持続可能性を事業の柱にしている。
同社によるリーハイ・テクノロジー社の買収は、先端技術を使ったリサイクル技術に投資しハイテク原材料の専門技術を活用していく同社の戦略を実現したもので、自動車以外の分野でも使用済みタイヤから得られる革新的なリサイクル原材料の活用を推進する方針としている。