原料ゴムの歴史と種類|合成ゴムの基礎知識

2020年06月03日

ゴムタイムス社

(1)原料ゴムの歴史

 原料ゴムは、天然素材である天然ゴムと、人間社会が作り出した合成ゴムに大別される。合成ゴムは、その化学構造によりグループ分けされ(JIS K 6397:2005)、さらに各グループには類似の性質を有する多数の原料ゴムが含まれている。

 原料ゴムの中で最も長期間使用され続けているのがヘベア樹というゴムの木が分泌するラテックスを乾燥固化した天然ゴムである。天然ゴムは、優れた機械的強度や耐摩耗性などの特性を有していることから、現在でも航空機用タイヤなど重要な産業資材の原料ゴムとして大きな役割を果たしている。

 1839年に天然ゴムの硫黄による架橋(加硫)が発見されたことを契機として、欧米で一大ゴム工業が誕生した。また、自動車の発展によりタイヤ用材料として天然ゴムが多量に使用されるようになったことから、天然ゴムの供給不足が慢性的となり合成ゴムの開発研究に拍車をかけた。

 史上初の合成ゴムであるジメチルブタジエンの合成に成功したのは1900年であった。その後研究開発が進められ、ドイツで工業生産が開始したのは1915年であった。しかし、このゴムは加工性が悪いうえに加硫ゴムの物性が天然ゴムに比較して劣っていたため第二次世界大戦後製造が中止された。

 1930年代は合成ゴムの開発が活発に行われた時代であった。ポリイソブチレン、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴムはこの時代の産物である。

 1950年代には、新規合成ゴムの開発が活発に行われ、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、高シスブタジエンゴム、フッ素ゴムなどが市場に登場した。1960年代に入ると、未加硫でもゴム弾性を示す種々の熱可塑性エラストマー(TPE)が開発され、ゴム材料加工工程の省エネルギー化、ゴム材料のリサイクルなど技術革新が進んだ。

 現在では、異種高分子物質同士をブレンドして得られるポリマーアロイのTPE化など、さらなる機能性向上を目指した研究がおこなわれている。

(2)原料ゴムの種類

 歴史的背景や科学技術の発展に伴い、天然ゴムでは達成できないさまざまな特性を有する合成ゴムが開発され工業化に至った。

 合成ゴムは、汎用ゴムと特殊ゴムに大別されている。汎用ゴムには、イソプレンゴム(天然ゴムを含む)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムなど生産量(使用量)の多いゴムが含まれており、一般的に引張り強さ、破断伸び、耐寒性、加工性、接着性などに優れているが、主鎖に不飽和結合を含むため、耐熱性、耐候性には劣る。

 汎用ゴムの欠点を改善する目的で開発されたゴムを特殊ゴムと呼び、これにはニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムなどがある。

 クロロプレンゴムは、汎用ゴムと同様に主鎖に不飽和結合を含むジエン系ゴムであり、天然ゴムに匹敵する機械的強度を有するが、分子鎖中に塩素を持つため化学構造が安定であり、ジエン系ゴムの欠点である耐熱性や耐候性が大幅に改善されている。

 シリコーンゴムは、耐寒性、耐熱性に優れているが、耐油性に劣る。フッ素系ゴムは耐熱性、耐薬品性に優れているが、耐寒性には劣る。このように各原料ゴムは利用上の長所と短所を有しているため、これらに注目しながら原料ゴムの選定を行う必要がある。

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