横浜ゴムは7月30日、2013年から天然ゴムの共同研究を行うタイのマヒドン大学とプリンス・オブ・ソンクラー大学との研究成果をインターナショナルポリマーカンファレンスオブタイランド(PCT-8)で発表した。
同社では、今回マヒドン大学との研究により、天然ゴムの基となる樹液(ラテックス)に含まれるタンパク質の解析および天然ゴムの生合成に深く関与するタンパク質の特定に成功した。これにより天然ゴムの生合成への理解が深まり、品質や生産に関わる研究を加速化していくことが可能となる。
天然ゴムはパラゴムノキから採取したラテックスを加工した原料で、タイヤの約30%を占める主要原料のひとつ。ただ、生産が東南アジアに集中しているため、異常気象や病気によって大規模な生産阻害を受ける可能性がある。今後タイヤ需要の拡大が見込まれる中、同社は天然ゴムの品質向上はもとより、安定生産に貢献する技術開発を推進することが重要な責務と考え、将来的には研究成果を天然ゴム農園の維持・発展に活用していく。
マヒドン大学との研究では、新鮮なラテックスやパラゴムノキの苗木からタンパク質を抽出し、含まれているタンパク質をナノレベルで分析した。その結果、ラテックスに含まれる800種以上のタンパク質が解析でき、これらの一部が天然ゴムの生合成や耐ストレス性に関係していることが判明した。さらに、異なる品種のパラゴムノキを比較することで生合成を促進するタンパク質や阻害するタンパク質の特定に成功した。これらは生合成のバイオマーカーとしての活用が期待できる。
また、ソンクラー大学とは天然ゴムの基礎研究を行っており、季節や地域、品種、加工法の異なるラテックスを分析し、ゴムの物性や化学特性の違いの有無を長期間評価している。現在までに天然ゴムは組成から物性まで非常に安定した材料であり、外的要因の影響を受けにくいことが分かってきている。
同社グループではCSRの重要課題のひとつに「バリューチェーンを通じたCSR活動の推進」を掲げている。同方針の下、今回の天然ゴムの共同研究に加え、天然ゴム農園での生物多様性調査や農家の安定収入のために天然ゴム林に竹や果樹などを混植して育てる「アグロフォレストリー農法」の普及を推進するなど農園の維持を支援している。