合成ゴム特集 採算是正で価格改定相次ぐ S―SBRの需要拡大続く

2018年11月02日

ゴムタイムス社

 合成ゴムは、タイヤなどの自動車関連用途を中心に多様な分野で需要が旺盛で、生産・販売する各社とも、ニーズに応じ絶え間なく製品を供給することに尽力している。今回取材した主要メーカーのほぼ全社から「安定供給」という言葉が聞かれた。

 安定供給に向け、採算是正のための製品価格の値上げと、生産能力の増強や維持を図る基盤整備の動きが顕著だ。

 価格の改定では、今秋に入りJSRとデンカが相次いで値上げを発表したほか、宇部興産、東ソー、旭化成なども今年値上げを実施している。ナフサやブタジエンなどの原料市況に呼応する値上げだけではなく、生産性を向上・維持するためのインフラ整備を主眼とする値上げも相次ぎ、需要家の理解を求めつつ収益の改善を図っている。

 一方、生産設備の拡充では、成熟した国内市場よりも需要拡大が期待される海外市場をにらみながら、各社の成長戦略に沿って積極的に海外での事業を強化しており、旭化成、日本ゼオン、宇部興産は東南アジアで、JSRはヨーロッパで、住友化学は中東で、それぞれ生産設備の新設または増強を進めている。

【CRの需給タイト加速】
【能力増強で供給過多のEP】

 品種別に見ると、低燃費タイヤ用の溶液重合スチレン・ブタジエンゴム(S―SBR)は、各社ともに販売が好調で、今後も成長が見込まれる中、供給体制の拡充や低燃費性や耐摩耗性を高めた新グレードの開発が勢いを増している。JSRのハンガリー新工場、旭化成のシンガポール工場、ドイツのトリンゼオ(旧スタイロン)、韓国のロッテベルサリスエラストマーズの能力増強により、世界的に生産能力の拡大が進む。新興国での自動車市場の拡大や、世界各国での燃費規制の強化、タイヤラベリング制度の普及を追い風に、CO2削減、燃費向上に貢献する低燃費タイヤのトレッド部に使われるS―SBRの好調は当面続きそうだ。

 ポリブタジエンゴム(BR)は、エコタイヤ向けの需要が拡大しており、今年前半はブタジエン価格の上昇に翻弄され利益面で苦戦する場面も見られたものの、宇部興産が東南アジアで能増を進めるなど、着実な成長が期待される。

 エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)は、アランセオ、ダウ、エクソンと能増が相次ぎ、グローバルに見れば供給過多な傾向となっているが、製品の特徴や用途による差別化も加速していて、好不調は企業によって差がある模様だ。住友化学はサウジアラビアの新プラントで商業生産をスタートさせる一方、高機能製品の開発を推進する。

 クロロプレンゴム(CR)は、合成ゴムの各品種の中でも特に安定供給に苦心している。建設資材、自動車用部品、資源開発関連、接着剤需要が増大し、供給が追い付かない状況が続いており、アランセオが来年早々に能増を予定するが、それでも供給不足が改善すると見る向きは少ない。トップメーカーのデンカでは能増の検討が大詰めを迎えるが、他の合成ゴム品目に比べ投資額がかさむため、各社とも設備投資には極めて慎重な姿勢を崩していない。

 こうした状況を反映し、今年上半期の合成ゴムの生産・出荷をめぐる各種統計では、品種や用途によって前年実績からの増減にばらつきが見られ、全体としては生産・出荷が微減となっている。

 合成ゴム工業会がまとめた1~6月の合成ゴム品種別生産実績によると、生産量は全体で78万9389tで前年同期比0・9%減となった。

 品種別生産量をみると、タイヤ向けを中心とする汎用のスチレン・ブタジエンゴム(SBR)は27万8159tで同3・1%減、同じく汎用のBRは16万3001tで同0・6%減となった。

 SBRのうち、SBRソリッドは21万2015tで同1・3%減、SBRノンオイルは12万3026tで同3・9%増、SBRオイルは8万8989tで同7・7%減、SBRラテックスは6万6144tで同8・4%減となった。

 自動車用ゴム部品を中心とするアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)は、5万8895tで同3・1%増、CRは6万3997tで同1・5%減、エチレン・プロピレンゴム(EPT)は11万7992tで同3・3%減となっている。

 NBRはホースやシール、パッキンなどの需要が堅調で前年同期を上回った。一方、CRとEPTは前年同期を下回った。CRについては、水系用途を中心に世界需要は伸びているが、供給はタイトとなっている。EPTは前年上半期が2桁増だった反動からマイナスとなったものの、需要自体は

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