横浜ゴムは11月20日、高い強度と優れた弾性を両立した2液型ウレタン系接着剤の基礎技術を確立したと発表した。
今回開発した技術はエポキシ系に匹敵する20Mpa~40Mpaの最大引張り強度と最大伸び率200%~500%のウレタン系ならではの優れた弾性を両立することに成功。これは研究プロジェクトにおいて、一般的に達成困難な技術領域を定める技術的上限曲線(通称バナナカーブ)を越える数値を実現している。
また、ウレタン系の弱点である温度、湿度といった環境による硬化の不具合や硬化速度の問題についても大幅に改善し、可使時間や強度発現を約2分~5分の間で設定できる短タクト性を実現した。硬化した後の接着剤の温度特性も、従来のウレタン系接着剤と比べて―30℃~180℃の広い領域で温度依存性が小さい安定した物性を保持する。さらに、動的な耐久性にも優れることに加え、2液の混合比率のずれが最大±20%以内であれば強度、伸びともに変わらない品質の安定性を持つ。また、混合比率を変えることで、物性を意図的にコントロールすることも可能で、異種材料間あるいは接着部位に適した物性に調整することもできる。
同技術は今後世界的に需要が急増すると見られる自動車構造用接着剤の開発に活用が可能なほか、過酷なヒートサイクルにさらされる電子機器をはじめとした工業用接着剤など多用途の接着剤開発に応用する方針だ。
近年、自動車業界では車体の軽量化が求められており、鉄鋼だけでなくアルミや炭素繊維強化樹脂(CFRP)などの軽量材料を組み合わせるマルチマテリアル構造が欧州を中心に急速に実用化されている。これに伴い、マルチマテリアルの接合は溶接が困難なことから自動車構造用接着剤のニーズが高まっている。これまで使用されてきたエポキシ系接着剤は高い強度を発現するものの、動きに追従するフレキシブルな弾性が低く、多様な部材に対応しづらい面がある。このため日本でも国家プロジェクトが発足するなど、マルチマテリアルに対応できる接着剤の開発が本格化してきている。こうした中、同社は建築や自動車窓枠向けとして定評のあるウレタン系接着剤の技術をベースに、自動車構造用接着剤に求められる強度と弾性を兼ね備えた接着剤の研究を進めてきた。