2019年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
我々は現在、時代の大きな変わり目にいるのではないでしょうか。政治的、経済的な側面からは、多国間ではなく自国の利害を強く主張し得る二国間の枠組みにより種々の問題を解決しようとの動きが、トランプ大統領の就任からほぼ2年が経過したアメリカにおいて顕著です。無論、この動きはアメリカだけに見られるわけではありません。イギリスのEU離脱問題を始めとして、EU内での財政政策や移民政策を巡っての協調の乱れも、同様の文脈の中で捉えることができるのではないでしょうか。
一方で、市場の統合を目指す多国間枠組み構築の動きも、大きく進展しています。環太平洋パートナーシップ(TPP)は、アメリカの離脱にもかかわらず残った参加国による署名がなされ各国の国内手続きも順調に進み、昨年12月に発効となりました。日EU経済連携協定(EPA)に関しても署名及び国内手続きは昨年中に終了し、本年早々の発効が待たれています。さらに東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)に関しても、本年中の妥結を目指した最終段階の交渉が行われているところです。多国間の協調による相互利益の追求か、それとも自国利益のあくなき追求なのか。我々はまさに今、岐路に立っているのかもしれません。
目を我々の製品、自動車タイヤに向けましょう。その基盤である自動車産業は現在、非常に大きな変革の波に洗われています。接続、自動運転、共有、そして電動、変革のキーとなるこれら四つの事象の英語の頭文字をとって「CASE」と呼ばれる、ビジネスモデルの非連続的な変化です。CASEの進展が自動車産業にどのような変革をもたらすのか、現段階でこれを見通すことは困難です。ただ、自動車産業にもたらされる変革は、自動車タイヤに対しても大きな影響を与えることは確かでしょう。
今後どのような形で世界情勢が推移しようとも、またCASEの進展によって自動車タイヤに求められるニーズが多様化しようとも、人の安全にかかわるタイヤという価値ある商品を提供し続けるという我々の姿勢は変わりません。日本のタイヤ産業のグローバル化は着実に進展していきます。タイヤというグローバルな商品の提供をとおして世界経済の発展に貢献すべく、事業活動を着実に進めていきます。
さて、昨年の国内自動車タイヤ生産量は新ゴム消費量ベースで105万tを超え、一昨年を上回ることが見込まれます。相応の規模を有する製造業としてタイヤの生産や提供が日本の経済や社会に与える影響は大きく、その大きさに見合う責任を事業者団体としての活動をとおして果たしていく必要があります。活動の基軸は従来と変わることなく「安全」と「環境」です。
安全対策としては、空気圧管理の重要性や冬用タイヤの装着の必要性に関する啓発などの様々な活動を、従来以上に工夫を重ねて取り組んでいきます。環境対策としては、製販一体での廃タイヤ適正処理の推進や不法投棄タイヤ除去に係る地方自治体への支援を通じて、廃タイヤ不法投棄問題の解決に貢献していきます。また低燃費タイヤの普及率は、ラベリング制度の効果もあって80%の水準にまで達しており、同制度の運用を通じて今後ともCO2排出量の削減に貢献していきます。さらに、新たに導入されたウェットグリップ、転がり抵抗及び車外騒音に係る規制に適合する製品を円滑に供給することを通じて、自動車の環境性能向上に貢献していきます。
変化の中にあっても、着実な一歩を積み重ねることで課題に取り組んでいきます。関係する皆様方の変わらぬご支援、ご鞭撻を、本年も宜しくお願い申し上げます。最後に、タイヤ産業に関わる全ての皆様方にとって本年が良き年となりますことを祈念し、私の新年のご挨拶とさせていただきます。