■ 新年インタビュー
プレミアムタイヤで存在感示す
横浜ゴム 山石昌孝社長
横浜ゴムは101年目の18年から新中計「GD2020」をスタートさせた。山石昌孝社長に18年を振り返ってもらうとともに、新中計の取り組みならびに今年の抱負などを聞いた。
◆米国タイヤ生産工場の減損処理について。
まず、当社の米国タイヤ生産会社「ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・ミシシッピ(YTMM)」において減損処理を計上することになり、関係各方面に多大なるご心配をおかけしたことを改めてお詫びしたい。
今回の減損処理に至った要因は、設備と人材面でいくつかの課題を抱えており、工場設立当初の計画に対し、生産立ち上げが遅れたことがある。現在、国内外工場から技術移転など、当社の最重要課題として改善を進めている。2020年以降、YTMM単体での営業利益黒字化に向け、自ら陣頭指揮を執り、TBR事業の改善に取り組んでいく。
◆18年を振り返ると
第3四半期までのタイヤ事業は、新車用(OE)タイヤは、国内では納入車種の切り替え時期と重なったため、販売が低迷したほか、海外も中国での自動車販売低迷による生産調整などで販売が減少した。
市販用(REP)タイヤでは、国内は年初の冬用タイヤの販売好調に加え、高付加価値商品の拡販により前年同期を上回ったものの、海外では一部新興国の通貨不安や米中貿易摩擦の警戒感などから販売が減少した。
MB事業では、ホース配管事業は建機や工作機の需要旺盛に加え、自動車用ホース配管も海外を中心に好調を維持し、売上収益は前年同期を上回った。工業資材事業も国内外でベルトコンベヤの販売が伸びた他、海洋商品も海外を中心に伸長し、売上収益は前年同期を上回った。一方、ハマタイト・電材事業および航空部品事業の売上収益は前年同期を下回った。
ATGについては、農業機械用の新車用タイヤの販売が好調で売上収益は前年同期を上回った。
こうした状況の下、18年12月期通期連結業績は、売上収益及び事業利益は過去最高を達成する見込みだ。
新中期経営計画「GD2020」の初年度にあたる18年は次の主な取組みを実施した。
まず、タイヤ消費材事業では、拡大が見込まれるプレミアムタイヤ市場における存在感の更なる向上を目指し、次の戦略を推進している。
まずプレミアムカー戦略に沿った新車装着の実績では、BMWのM5やX4、トヨタのクラウンに納入された。
ウィンタータイヤ戦略に関しては、欧州にオールシーズンタイヤ「ブルーアース4SAW21」を投入し、ランフラットモデルナルとなる「アイスガード6Z・P・S」の発売も開始した。
ホビータイヤ戦略では、18年7月にSUV・ピックアップトラック用タイヤブランドの新商品「ジオランダーX―MT」を日本で発売するとともに、「アドバンA053」「アドバンA08B」「アドバンA052」のサイズ拡大を実施した。
この他、モータースポーツ活動としては、昨年スタートした「FIAワールド・ツーリング・カーカップ(WTCR)でワンメイク供給を実施。また、国内最高峰のカートレース、「全日本カート選手権」OK部門において、初のシリーズチャンピオンを獲得した。
タイヤ生産財事業については、OHT(オフハイウエイタイヤ)では旺盛な需要が続く建設車両向けで、グループ全体で柔軟な供給体制を推進した。
トラック・バス用タイヤでは、超偏平シングルタイヤの好調な販売増に対応すべく、三重工場の生産能力の倍増を決定した。また、国内では10年ぶりの新商品となる耐摩耗性能重視型トラック・バス用オールシーズンタイヤ「710R」を発売し好評を得ている。
MB事業では、「自動車部品ビジネスの拡大」戦略の一つに掲げ、カーエアコンホースと、カーエアコンの内部熱交換機を開発し、フィアットクライスラーのジープ・ラングラーとコンパスに採用された。また、「海洋事業を確固たる世界No1へ」では、インドネシアの子会社でマリンホースの国際認証を取得し、主にアセアンの石油会社向けに納入を開始した。
CSR活動においては、「未来への思いやり」をコンセプトに、「持続可能な開発目標」の達成に向けて取り組みを行っており、「持続可能な天然ゴムの調達方針」を策定した。
◆19年以降の取り組み
タイヤ消費財事業としては、プレミアムカー戦略ではブランド力アップを目的に、国内外でプレミアムOEへの納入を加速させていく。また、国内リプレイス市場に新商品「ブルーアースGTAE51」を2月より投入し、プレミアム市場での存在感の向上につなげていく。
ウィンタータイヤ戦略では、冬用タイヤの氷上性能向上に貢献する、給水効果を評価する新技術も開発した。これらの技術を最大限活用することで、ウィンタータイヤの性能No1を目指す。
ホビータイヤ戦略に関しては、北米を中心に投入したジオランダーの新商品拡販を図っていく。
タイヤ生産財事業については、今後もOHTを成長ドライバーとして「次の100年の収益の柱へ」を掲げ、その中心となるAGTではインド・ダヘジ工場の生産能力を19年度末までに従来比1・6倍に増強する。
MB事業では、「得意分野への資源集中」を掲げて活動していく。当社が確立した高強度・高弾性ウレタン系接着剤の基礎技術は、今後世界的に需要拡大が急増すると見られる自動車構造用接着剤の開発に応用していく考えだ。
◆19年の抱負を
当社は18年101年目を向かえ、新中計「GD2020」のもと、次の100年に向けた新たな一歩を踏み出した。当社の強みを再定義し、収益を伴った成長をしていくため全社員一丸で挑戦し続け、世界中のお客様から信頼され、必要とされる企業へと変革していくことをここで約束したい。
(アングル)
「18年は60点」と語った山石社長。「YTMMの減損処理を計上したことにより、昨年11月の決算発表会で通期予想を下方修正する事態になった。これは経営者としてこれは良くないことと認識している」と述べ、厳しい点数を付けた理由を説明した。
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