イノアックコーポレーションの研究機関であるイノアック技術研究所(ITC)は1月28日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導するプログラムにおいて、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、高い柔軟性と加工性を持つ高性能断熱材「フレキシブルエアロゲル」量産プロセスの開発に成功したと発表した。
この断熱材は、産総研の化学プロセス研究部門・階層的構造材料プロセスグループとITCが2014年に共同開発した、軽量・高強度のポリプロピレンと熱伝導率が低いシリカエアロゲルで構成する非真空の複合断熱材で、真空断熱材に近い断熱性能を持ちつつ切断や曲面加工を可能にし、シリカエアロゲルをポリプロピレン内部へ含浸することにより従来製品の粉落ちの問題も解消した。
2017年度からは、NEDOの戦略的省エネルギー技術革新プログラムで実用化に向けた大型の試料作製プロセスの開発に取り組み、量産プロセスを開発し、長さ30メートルとなる長尺のロール状試料の作製に成功した。このプロセスを従来の製造設備に用いることで、高い柔軟性と成形性、加工性を持つ高性能な複合断熱材を低コストで大量に生産することができ、今後、自動車や住宅、家電、熱機器などの幅広い分野で複雑な形状にもこの断熱材を適用できるようになる。
近年、自動車や住宅、電子機器などの分野で、省エネルギー化や熱マネジメント、安全性の観点から高性能で柔軟性の高い断熱材の社会的ニーズが高まっているが、代表的な高性能断熱材である真空断熱材は、内部を真空に保つ必要があるため薄い板材や曲面を含む形状に使用できず、真空状態が不要で加工性に優れるシリカエアロゲルの複合材料も、シリカが崩れてしまう粉落ちの問題や柔軟性が十分でないなどの問題があり、広い普及には至っていない。
同社は、1月30日から東京ビッグサイトで開催される「第43回地球環境とエネルギーの調和展」と「第18回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」で、NEDOブースと産総研ブースにて製品展示と説明を実施することにしている。