日本ゼオンは2月4日、スーパーグロース法で製造したカーボンナノチューブ(SGCNT、商品名:ゼオナノSG101)の環境中の微生物による生分解性の研究開発を開始すると発表した。
同研究は名古屋大学大学院工学研究科・生命分子工学専攻・生命システム工学講座、堀教授の成果を事業化するために設立されたフレンドマイクローブと共同で行われる。
カーボンナノチューブ(CNT)は、エレクトロニクスをはじめ、様々な産業分野に大きな便益をもたらすことが期待されており、応用展開が進んできた。その一方、環境中に放出された場合の影響が充分に解明されておらず、早急な管理策の策定は産業化の大きな課題だった。同社は2017年度、国立研究開発法人産業技術総合研究所のナノチューブ実用化研究センターとの共同研究において、肺マクロファージや肝臓クッパー細胞等の免疫細胞がSGCNTを貪食し、酸化酵素の酸化作用により生分解性を示すことを確認した。SGCNTの免疫細胞による生分解性の決め手となった近赤外光吸収特性を利用した細胞内CNTの定量手法は、現在ナノテクノロジーの国際標準化機構(ISO)のナノテクノロジーに関する技術委員会において標準化が進められている。
一方、CNTの産業化に際してはサプライチェーンにおいて安全データシート(SDS)の中の重要な一項目として、活性汚泥法による生分解性の情報が求められている。生分解性は活性汚泥中の微生物が有機物の働きによって、対象化合物が二酸化炭素と水に分解される過程を調べるが、CNTは炭素からなる無機物であり、一般には環境生分解は起きないと考えられている。実際にこれまで微生物によるCNTの生分解は確認されていない。
このような状況から、同社は排水処理、バイオコントロールによる環境浄化、新規微生物関連技術の開発に強みを持つ名古屋大学の堀教授、名古屋大学発のバイオ系ベンチャー企業であるフレンドマイクローブとの協業により、環境中におけるCNTの生分解性の研究開発に着手することとした。同社は環境微生物のみならず、様々な菌類等も対象として、SGCNTの製造、利用、廃棄に至るまでのすべてのライフサイクルにおける管理策の策定を行うことで、製造者としての社会的責任に応えていくとしている。