日本ゼオンは2月14日、液晶ディスプレイ用位相差フィルムの生産技術開発による産業発展への功績が評価され、公益財団法人大河内記念会より大河内記念技術賞を受賞することが決まったと発表した。3月26日に東京都千代田区の日本工業倶楽部で開催される贈賞式で表彰される予定。
同社が開発した液晶ディスプレイ用位相差フィルム「ゼオノアフィルム」は、独自のポリマー設計技術で開発した熱可塑性プラスチック(シクロオレフィンポリマー)を原料とする光学用フィルムで、主に位相差フィルムや偏光板保護フィルムなど、偏光板の部材として使用されている。
今回の評価対象となったのは、同社独自の加工技術でシクロオレフィンポリマーをフィルム化する「溶融押出法」と、フィルムの分子を一定方向に配向させる「逐次2軸延伸」、「斜め延伸」等の延伸技術。
従来の溶液キャスト法は、厚み精度に優れるものの、生産性を上げることが難しく、設備も大規模なものが必要とされ、これが光学用フィルムの高コストの要因となっていた。同社は生産性向上と設備のコンパクト化を目指し、溶融押出法の開発を進め、溶液キャストを凌駕する厚み精度を得ることに成功した。これにより、品質は同等以上で圧倒的なコスト競争力を持つフィルムの生産が可能となった。
溶融押し出しで製膜されたフィルムは、分子の向きがランダムの状態であり、これを延伸させることにより分子が一定方向に配向される。大型液晶ディスプレイ用に視野角を拡大するためには「逐次2軸延伸」が、スマートフォンなどの中小型ディスプレイには「斜め延伸」の技術がそれぞれ用いられている。膜厚や分子配向、光学物性等の制御には多くの課題があったが、同社が開発した新たな製法は諸性状の制御を可能とし、産業の発展にとっても大きな後押しとなった。