主要上場ゴム企業の2019年3月期連結決算が出揃った(日東化工のみ非連結)。JSR・日本ゼオンの合成ゴム大手2社を含む22社の決算をみると、米中貿易摩擦の激化による中国経済が減速し、増収企業は前期の21社(95%)から17社(77%)に減少した。利益面も原材料費や人件費などコスト増が響き、営業増益企業数は前期の11社(50%)から4社(18%)に減少した。
22社合計の売上高は3兆6179億2000万円で同一企業との前期比では2・7%増、営業利益は1989億2200万円で同17・3%減、経常利益は2143億7600万円で同18・2%減、当期純利益は同3・9%減となった。
売上高は17社が増収となり、増収企業は前期の21社から4社減った。自動車生産が堅調に推移した上、一般産業用機械も伸びたことで、ゴム企業の国内事業はおおむね良好だった。一方、海外事業は、米国や東南アジアは伸長したのに対し、中国は自動車や電子部品市場が急速に落ち込むなど、中国経済の減速が各社業績を下押しする要因となった。
営業利益については、増益企業数が前期の11社から7社減り4社となった。原油高の高騰を背景に、原料のナフサやブタジエンの価格が上昇基調で推移したことに加え、人手不足に伴う人件費負担増や運送費の上昇などで、利益を落とした企業もあった。
また、生産性向上に向けた先行投資費用の増加や、海外子会社の固定資産の減損損失計上などで、減益となった企業もあった。このため、営業減益企業数は17社で、前期と比べると6社増える結果となった。
経常利益に関しては、経常増益企業は5社で前期の14社から9社減った。
増収企業のうち、売上高が2桁増となったのは、JSR(17・7%増)、ニッタ(22・2%増)、昭和ホールディングス(13・4%増)の3社となり、こちらは前期と同数となった。
営業利益では、2桁増の企業はニッタ(16・4%増)の1社のみで前期の8社から7社減った。
ニッタは中期経営計画V2020の計画達成に向けた先行コストの負担や原材料費の値上がりがあったものの、生産性改善効果などもあった。
経常利益に関しては、バンドー化学(14・5%増)、ナンシン(25・0%増)の2社が2桁増となり、前期の11社に比べて2桁増の企業数は9社減った。
次期の通期業績予想は、バンドー化学と昭和ホールディングスの2社は買収を行った影響などで、現時点で合理的な予想をすることが困難として公表しておらず、20社が対象となる。
合計の売上高は3兆5194億500万円で今期実績比2・7%減、営業利益は2024億4500万円で同1・8%増、経常利益は2167億700万円で1・1%増、当期純利益は1395億3400万円で同横ばいとなった。
次期の見通しについては、国内は消費税増税を控えているほか、海外は引き続き米中貿易摩擦の深刻化による中国経済の減速に加え、英国のEU離脱など不安定な要素が多く、景気の先行きは予断を許さない状況にある。そうした中で、増収増益を予想した上場ゴム企業は11社で、各社とも慎重な見方を崩していない。