今年上半期のゴム・樹脂関連企業の海外新拠点についての発表は、9社11拠点となった。昨年上半期の海外進出企業は10社だったが、今年は2桁に届かなかった。今年の進出先は、米国とインドが3拠点で最多となった。ヨーロッパへの進出は見られなかった。タイヤメーカーの進出は1社だった。
◆カネカ
カネカは1月8日、グループ会社のカネカフーズインドネシア(KFI)がインドネシアに総額約50億円規模の加工油脂製品の新工場を建設すると発表した。市場拡大が続くインドネシアで製菓・製パン素材の事業拡大を図るもので、フィリング製品とマーガリンなどを中心に生産能力を現在の約5倍の年間1万5000tに引き上げる。新工場は昨年12月に着工し、2020年春に稼動予定。インドネシアは、パン消費量が年に5%のペースで増加するなど、日本のパン食文化が広まっている。KFIは、現地嗜好に合う製品を開発するとともに、今までにない食感や新たな製法で柔らかいパンを提案することで事業を拡大してきた。今後は、マーガリンなどの新製品の開発、拡販や、パンや菓子などの商品提案、顧客の製造サポートなど、顧客ニーズに合わせたソリューション提供を強化し、アジア市場へ日本のパン・菓子文化を広め、売上金額100億円を目指すことにしている。
◆豊田合成
豊田合成は2月8日、インドの子会社である豊田合成ミンダインディア(TGMIN)がグジャラート工場の開所式を2月4日に行ったと発表した。開所式では、宮﨑直樹社長が「インドで6拠点目となるグジャラート工場が稼動したことを喜ばしく思う。グジャラート州出身のモディ首相が掲げている『メーク・イン・インディア』を通じて、インドでの自動車産業の発展に今後も貢献していきたい」と抱負を述べた。同社は、インドを重点市場と位置づけ、昨年4月にはデリー近郊に技術・営業拠点としてグルガオン事務所を新設するなど、開発・生産体制を強化しており、2025年度までに同国での売上規模を現在の2倍以上となる350億円に拡大することを目指している。
また、豊田合成は5月20日、米国における顧客の製品開発のニーズに迅速に対応するため、米州地域の統括子会社「豊田合成ノースアメリカ」(TGNA)の技術・営業事務所をオハイオ州ダブリン市に設立すると発表した。従来はミシガン州トロイ市のTGNA本社にあった設計や営業機能を、主要な顧客であるホンダの研究開発拠点「ホンダR&Dアメリカズ」のオハイオ事務所の近隣にも置くことで、内外装製品やエアバッグの開発業務のスピードアップを図る。新事務所は、2019年7月稼働開始予定で、従業員数は5人。2020年代前半には、技術・営業員を約10人に増員する計画となっている。今後も同社は、主要市場である米国でカーメーカーの開発・生産ニーズに応え、さらなる事業拡大を目指すとしている。
◆西川ゴム工業
西川ゴム工業は2月15日、昨年8月24日にに公表した子会社の湖北西川密封系統有限公司の設立を完了したと発表した。同子会社は、自動車用ゴム・樹脂製品の製造加工および販売を事業内容とし、平成32年度以降から年間売上高1億7000万元(約30億円)を目標としている。同子会社は、湖北省孝感市に位置し、総経理は大洲康裕氏、従業員は約240人となる予定で、資本金900万USドル、出資比率は同社100%となっている。
◆丸紅
丸紅は2月19日、ロシアにおける鉱山車両用大型タイヤ(ORタイヤ)をはじめとする、ゴム資材を取り扱う販売会社Marubeni・Rubber・RUS・LLCをロシア連邦モスクワ市に昨年12月に設立したと発表した。豊富な天然資源を有するロシアは、鉱山開発が活発でORタイヤをはじめ鉱山用ゴム資材の一大市場となっており、同社は1970年代から鉱山用ゴム資材の販売を行ってきた。今回の販売会社設立で、販売力を強化し、増加する需要の取り込みを図るとともに、大規模鉱山だけでなく中小規模鉱山への販売拡大を狙う。また、将来的にタイヤ修理やゴムをタイヤに貼り付け再利用するなどの廃タイヤ処理をはじめとしたプロダクトサポートを通じ、ORタイヤ関連のトータルソリューションプロバイダーを目指す。同社は、ロシアをはじめ世界20カ国で鉱山用ゴム資材を販売おり、販売会社の設立を足掛りとして、今後は顧客の様々なニーズに対してソリューションを提供する体制を確立し、各国に展開していく方針。
◆三井化学
三井化学は3月5日、同社グループの中国の製造拠点である三井化学複合塑料(中山)有限公司にガラス長繊維強化ポリプロピレンの生産設備を新設すると発表した。生産設備新設は、2020年に完工、同年9月に営業運転の開始予定、生産能力は年産3500tとなっている。長繊維GFPPの製造拠点は、日本、米国に次ぎ3拠点目となり、今回の設備新設により、同社の長繊維GFPPの生産能力は、年産1万500tとなる。プライムポリマーが開発した同製品は、繊維状のガラスとポリプロピレン樹脂を溶融・混練して得られる複合材料で、軽量でガラス繊維が長いことによる剛性や耐衝撃性のバランスに優れていることに加え、外観性が良いことから、無塗装による自動車向けバックドアインナー等に採用されている。自動車の軽量化に貢献するバックドアなどの金属代替素材として、繊維強化樹脂の需要は増加が見込まれており、同社は世界的に拡大する需要を