三菱ケミカルは7月11日、炭素繊維複合材料であるSMC(Sheet Molding Compound)の製造設備を、同社が44%出資するイタリアのC・P・C・SRL(CPC)の隣接地に新設すると発表した。同設備の稼働開始は2020年9月を予定している。
同社が開発したSMCは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の中間基材の一種で、長さ数cmにカットされた炭素繊維を樹脂中に分散させたシート状の材料。プレス成形により2~5分程度の短時間で部材に加工可能であることに加え、連続した炭素繊維に樹脂を含浸させた中間基材であるプリプレグと比べて、複雑な形状の部材を成形することができるという特長がある。
同社は現在、豊橋市の愛知事業所においてSMCを製造している。国内では自動車のドアインナー・ラゲッジインナーやバックドアの構造材などに既に採用されている。また、欧州では、CPCを通じてCFRPを主構造材としたモビリティ分野の開拓を行ってきた。現在、欧州の高級車メーカーを中心に複数社から材料認定の取得を受けるため、SMCの開発を進めており、今後もその採用が増えていくことが期待されている。
同社としてはこうした旺盛な需要に応じるべく、伝統的に最先端のエンジニアリング力を有し、欧州の自動車関連の顧客へアクセスにも優れ、経験豊富な人材を多数輩出しているイタリア・モデナ市に生産設備を新設し、生産能力を増強する。これによりSMCの生産体制を愛知事業所とあわせて、グローバルに更なる拡販を進めていく。
同社は、今後も、日・米・欧にある炭素繊維の生産拠点と、設計提案力に裏打ちされたCPCの高い成形加工能力、欧米を中心に高いプレゼンスを誇る三菱ケミカルアドバンスドマテリアル社(MCAM)のマーケティング力、セールスネットワークを融合させ、技術革新の著しいモビリティ分野に対して最適なソリューションをタイムリーに提供すべく、積極的に事業を展開していく。