デンカは9月9日、経営計画「Denka Value―Up」の下で進めている事業ポートフォリオ変革の一環として、シンガポールの連結子会社であるデンカシンガポール(DSPL)におけるポリスチレン(GPPS、製品名「Denka Styrol」)の生産を停止し、生産設備の改造により、MS樹脂の能力増強を行うと発表した。投資額は約27億円。
MS樹脂は、液晶テレビとモニターの大画面化・狭額縁化により需要が急増しているバックライト用導光板をはじめとした光学用途や、中国を中心としたアジア太平洋地域において成長著しい化粧品用容器等の非光学用途の拡大があり、現在供給能力が不足している。
同社は、MS樹脂のリーディングカンパニーとして拡大する需要に対応すべく、既存のポリスチレン生産設備の改造により、MS樹脂の生産能力を現在の7万tから倍増して14万tに増強し、将来の需要拡大に対応するとともに、現在の1基生産体制を2基体制とし、BCP対応を強化する。
同社は、1997年にシンガポールにて高強度GPPSであるMW―1を中心にポリスチレンの生産販売を開始し、ASEAN、中国をはじめ世界30カ国以上で使用されている。しかし、ポリスチレンの海外市場は需要に対し供給が余剰であることから、この度ポリスチレンの生産を停止し、より付加価値が高い機能樹脂であるMS樹脂の製造設備へ転換する。
MS樹脂は、スチレンとメタクリル酸メチル(MMA)の共重合体で、吸湿性が低いことによる寸法安定性や、低比重、良成型性という品質優位性を持つ。さらに、DSPLでは、連続プラントでの精密制御技術を活かした低コンタミ、良外観を備えた製品を安定生産し、他社との差別化を図っており、その品質は市場において高い評価を受けている。
同社は、経営計画において、2022年度の営業利益に占めるスペシャリティー化率90%を目標に掲げている。今後も将来需要に対応した投資を迅速に行い、基盤事業のさらなるスペシャリティー化を目指すことにしている。