東レは11月18日、世界初となるナノサイズの連続する空隙構造を持った多孔質炭素繊維を創出したと発表した。
今回開発した素材をガス分離膜の構造を支える支持層に用いることで、CO2の分離や水素製造に用いられる高性能分離膜の軽量化、コンパクト化が図られるとともに、分離性能を向上させることができる。
同社は同素材のさらなる研究・技術開発を進め、カーボンリサイクルの促進や水素社会、省エネ社会の実現に向けて、外部との連携も視野に用途開発を進めることにしている。
CO2やバイオガス、水素等のさまざまなガスの分離には、一般的には吸収法や吸着法が用いられているが、装置が大きく、エネルギー消費によるCO2排出量が多いという課題があった。そのため、膜を用いたガス分離法が注目され、研究が進められているが、ガス分離性能と耐久性を両立させた膜は実用化されていない。
同素材は、炭素でできていることから化学的に安定しており、ガス透過性にも優れている。また、柔軟性に優れる細い繊維状であることから、ガス分離膜の支持層として用いると、モジュールに多くのガス分離膜を収納してコンパクトにでき、軽量化することもできる。さまざまなガス分離機能層と組み合わせることが可能で、天然ガス精製やバイオガス精製、水素製造など、サステナブル社会の実現に向けて必須とされる各種高性能分離膜の早期実用化への貢献を目指す。
同素材は、同社の保有する高分子技術と、トップシェアを誇る炭素繊維技術や水処理等の分離膜技術を融合させることで創出した。同社の得意とする高分子技術を活用することで、全ての細孔空隙と炭素が規則的に連続する多孔質炭素繊維を生み出した。この細孔空隙構造は、孔径サイズをナノレベルからマイクロレベルに任意に作ることが可能となっている。また、この多孔質炭素繊維の中心部を空洞とした中空糸形状とすることも可能となる。
この多孔質炭素繊維は、吸着性能にも優れており、その特性を活かした用途として、電極材料や触媒の担体など高性能電池にも応用できる。