主要ゴム企業は14社が減収 19年ゴム業界10大ニュース詳報

2019年12月09日

ゴムタイムス社

①米中対立が業績を直撃
 米中貿易摩擦の激化による中国経済減速や国内外での人件費上昇など経費増を反映し、上場ゴム22社の20年3月期第2四半期業績は減収減益企業は12社(55%)。
 22社合計の売上高は1兆7557億7500万円で前年同期比2・0%減。22社のうち増収企業は8社(36%)なった。 前年同期の増収企業が76%(21社中16社)を占めていたことを踏まえると、ゴム上場企業の売上は減速感が鮮明になった。
 また、営業増益企業は22社中6社(27%)。多くの企業が営業減益に見舞われたのは、主要需要先の自動車業界で北米、中国を中心に自動車生産が鈍化したこと、インドの自動車市場が急減したこと、為替変動の影響や原材料価格、人件費、物流費上昇なども利益を圧迫させた。

②ゴム企業人手不足続く
 本紙がゴム関連の原材料メーカー、製造企業、卸商社を対象に3月実施した「雇用と人材に関する緊急アンケート」では、7割以上のゴム企業が人手不足の状況にある。人員の過不足状況の問では、「やや不足している」との回答が最多で46・2%に上り、約半数を占めた。次いで多かった「不足している」の30・8%と合わせると77・0%の企業が人手不足と回答した。

③海洋プラ問題で新たな国際的枠組み
 この枠組みは、プラスチックごみの海洋への流出を抑制するためのさまざまな取り組みを後押しするものだ。プラスチック廃棄物の発生と投棄の削減、持続可能な消費と生産の推進などの根本的な対策だけでなく、海洋ごみの回収や、地球規模のモニタリングのための技術開発も奨励するとしている。海洋プラスチックごみ問題は昨今、レジ袋やストローなど、プラスチックごみ削減の動きが活発だが、今後はマイクロプラスチックの削減の検討も本格化する流れになりそうだ。

④物流費高騰を理由に市販用タイヤ値上げ
 6月以降、タイヤ各社が国内市販用タイヤのメーカー出荷価格を8月から値上げすると発表。全社が物流費高騰を要因。人手不足等を背景に物流費が高騰し、今後もこの傾向が続くと予測される。
 国内市販用タイヤをめぐって、タイヤ各社が足並みをそろえて値上げを発表するのは、2017年以来2年ぶり。前回値上げでは、タイヤの主要原料である天然ゴム価格の高騰に加え、合成ゴムやカーボンブラックなど石油化学関連の原材料の高止まりを受けて、タイヤ各社が6年ぶりに値上げを実施した。その中、今年の価格改定は、各社とも物流関連費の高騰を理由に挙げているのが特徴で、物流費高騰を要因とするタイヤの値上げは、これまでに例がないと見られる。

⑤新ポリマー発表相次ぐ
 JSRが9月に販売を開発した新SBRは、同社が蓄積してきた独自の分子設計技術と水素添加技術を組み合わせ、不飽和結合数を最適化させることにより、ゴム分子同士の絡み合い数の増加と、架橋した際の応力集中の分散が可能となり、従来の低燃費タイヤ用溶液重合SBR(SSBR)対比の強度を約2倍に向上することができる。同材料をトレッドコンパウンドに使用したタイヤは、従来のSSBR搭載タイヤに比べ、低燃費性能とグリップ性能を維持したまま、耐摩耗性を50%以上改善するという評価結果も出ている。

 日本ゼオンが21年の販売開始を目指すSーSBRの新ポリマーは、住友化学と研究部門を統合して開発を進めているシナジーポリマー。現在、低燃費性を向上させたタイプと耐摩耗性を向上させたタイプの2種類の試作品を用意している。決算説明会で新ポリマーについて、田中公章社長は「それぞれの特徴のあるものが製造できるようになった」と説明し、両試作品とも顧客評価が進んでいることを明かした。

 ブリヂストンが10月に発表したSUSYMは、同社が18年5月発表の「High Strength Rubber」をさらに進化させたもの。従来のゴムよりも高強度・高耐久であるとともに、①穴が開きにくい(耐突き刺し性)、②治る(再生・修復性)、③低温でも強い(低温耐衝撃性)などの性能が飛躍的に向上している。

東京モーターショーでサシムを発表する会田昭二郎フェロー

東京モーターショーでサシムを紹介する会田昭二郎フェロー

⑥タイヤ各社のAI活用が加速
 横浜ゴムが7月、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)との共同研究により、開発したバイオエタノールからブタジエンを生成する世界最高の生産性を有する触媒システムは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)」の委託事業として実施した。超超PJでは計算科学や人工知能(AI)を積極的に活用することで、従来の経験と勘を頼りにした材料開発と比較し開発期間を20分の1へ短縮を目指す。
 住友ゴム工業が10月、日立製作所とPTCジャパンとの協業で開始した新生産システムは、まず数年以内に白河工場に導入した後、国内工場に導入を進め、25年までに国内外にある12の全タイヤ工場への導入を進める方針。プラットフォームを統一。AI活用を共有することでグローバルでの横展開を加速させ、新システムによるデータの一元的な可視化やビッグデータ解析、人工知能の活用により、高品質・高効率なタイヤ生産を目指す。

⑦台風19号でゴム企業の生産活動に影響
 10月12日から13日にかけて東日本に上陸した台風19号は、工場や営業所への浸水被害や工場の一時操業休止など、ゴム・樹脂関連企業にも甚大な影響をもたらした。
 オカモトは、福島県いわき市にある福島工場で、近隣を流れる河川の堤防決壊により工場全体の構内に浸水する被害が発生した。同社は田村俊夫社長をリーダーとする緊急対策本部を開設し、復旧に向けて対応。同社の従業員および協力会社などに人的被害はなかった。
 住友ゴム工業は、販売会社のダンロップタイヤ東北で、福島県にあるいわき営業所と須賀川営業所に浸水し、営業を一時停止した。また、大内新興化学工業は、福島県の須賀川工場で、阿武隈川の氾濫により工場が浸水した。被害状況の把握を急ぎ、復旧作業を行ってた。この他、東北ゴム商組によると、ゴム工業品を販売する宮城県の組合員企業で、宮城県と福島県の計2ヵ所の営業拠点が浸水したと発表した。

⑧健康経営への取り組み広がる
 従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践するゴム企業が増えている。経済産業省が2016年度に「健康経営優良法人認定制度」を創設するなど国や自治体が後押ししていることや、企業側も認定を機に企業価値向上が期待できる側面があり、健康経営に注力する動きがゴム業界に広がりつつある。
 合成ゴム大手のJSRは「健康経営優良法人2019(大規模法人部門)ホワイト500」に3年連続で認定された。
 同じく合成ゴム大手の日本ゼオンも「ゼオングループ全員の成長と力の発揮は 一人ひとりの健康がベース」 をトップ方針の考え方に掲げ「健康経営優良法人2019」に認定された。
 住友ゴム工業は、昨年制定した健康経営宣言の実践による定期健康診断や特定保健指導の推進による生活習慣病などの疾病予防、ワークライフバランスの推進といった取り組みが評価され、同制度に3年連続で選定されている。

社内ヨガセミナーの様子(住友ゴム工業)

⑨各地ゴム商組が40周年
 東部ゴム商組の40周年記念式典で、山上茂久理事長は「時代の変化に適応した組合運営を続け、40周年を迎えられたのは大変光栄であり、先人の方々の苦労に対し改めて感謝と尊敬の意を表したい」等とあいさつした。
 西部ゴム商組の創立40周年記念式典で岡浩史理事長は「各社の事業は多岐に渡るようになったが、同業、異業種を問わず、刺激を与える場を作るという組合であり続けたい。今後も互いに切磋琢磨できるようになれば、組合の使命としてはこの上のない喜びだ」等と述べた。
 東北ゴム商組の創立40周年記念式典で、冨田和彦理事長は「バブル崩壊とリーマンショック、さまざまな逆風もあった中、業界発展を願い活動し、切磋琢磨し合い、会員相互が強い体質になっていると感じる」と述べた。
 中部ゴム商組の創立40周年記念式典・祝賀会の式典で加藤巳千彦理事長は「組合が築いた40年の歴史と実績を様々な事業活動を通じ、組合員の事業発展に貢献できるよう組合事業に真摯に取り組んでいく」と挨拶した。

⑩半導体材で韓国輸出規制
 政府は7月1日、韓国に対し、フッ化水素など半導体材料となる3品目の輸出管理を強化すると発表。経済産業省によると、対象となるのはフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目で、韓国向けの輸出について7月4日から包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め輸出審査を行う。韓国は、輸出の際に個別申請が不要な規制品目のうち、レジストでは、主に極端紫外線(EUV)や電子線(EB)を用いた半導体向けの製品が対象で、半導体用フォトレジストは世界シェアの約9割が日本製品。中でもトップクラスのシェアを占めるJSRは、「どの製品が規制の対象に該当するのか確認している」と影響について調査を急いだ。[/hidepost]

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