本紙は昨年10月時点でゴム関連の原材料メーカー、製造企業、商社を対象に「2020年の景気見通しと業績予想」と題するアンケート調査を実施し、68社から回答を得た。その結果、20年の景気見通しについては「緩やかに下降する」との回答が過半数となり、当面は景気回復が見込めないという見方が大勢を占めた。
◆景気見通し
今年3月までの景気見通しについての設問は、【図1】の回答結果となり、「緩やかに下降する」が53・7%、「変化なし」が22・4%、「変化はあまりないがやや明るい兆し」が14・9%、「緩やかに回復する」が6・0%、「悪化する」が3・0%。「拡大基調となる」という回答はゼロだった。
本紙では、新年と夏季の年2回、景況アンケートを実施しているが、景気の見通しで「緩やかに下降する」がトップとなったのは、過去10年では2013年の新年、昨年の夏季に続き3度目。さらに、「悪化する」を含む下降局面との見通しが過半数に達したのは、近年では民主党からの政権交代で第2次安倍政権が誕生したばかりの2013年の新年と、リーマンショック直後の2009年の新年の2度だけで、景気の冷え込みが一段と深刻化していることを示す結果となった。
12月の日銀短観での製造業の業況判断DIは、大企業がゼロで9月調査比5ポイント悪化、中堅企業が1で同1ポイント悪化、中小企業がマイナス9で5ポイント悪化と、軒並み悪化している。また、内閣府が発表する景気動向指数は、昨年8月に「下げ止まり」から「悪化」に基調判断が下方修正され、10月の速報でも据え置かれた。今回のアンケート結果もこうした傾向を反映するものとなった。
◆景気見通しの判断理由
景気見通しの判断理由については【図2】の回答結果となり、「企業収益の動向」が23・3%で最多となり、次いで「アジア・中国の景気動向」が20・3%、「設備投資の動向」が15・7%、「米国の景気動向」が9・1%となった。
主要上場ゴム関連企業22社の20年度上半期は、米中貿易摩擦の激化による中国経済の減速や国内外での人件費・物流費などのコスト増を受けて、減収減益企業が12社となり、55%に上った。こうした業績が各企業の景気判断に影響を与えたものと見られる。
また、「アジア・中国の景気動向」が前年の6位から2位に、「米国の景気動向」が前年の5位から4位に順位を上げており、米中貿易摩擦の影響が景気を判断する上で重視されたと推察される。
◆期待する業界
20年度に期待する需要業界についての設問では、【図3】の回答結果が得られ、「自動車」と「半導体」がともに16・1%を占め、同率で首位となった。
自動車については、日本自動車タイヤ協会(JATMA)が今年の自動車生産台数を前年比1%減と見込み、タイヤ販売をほぼ前年並みと予想するなど、大幅な販売増は想定されていないものの、CASEの進展に伴う新たな需要創出への期待感が今回のアンケート結果に現れたと見られる。
一方、半導体では、半導体市場の低迷が底を打ったとの見方が一部で出始めたことから、関連需要の回復への期待が高まっているようだ。世界半導体市場統計が昨年12月に発表した市場予測でも、「20年は世界経済のさらなる悪化を想定しなかったことに加え、5Gの立ち上がりやデータセンタ関連投資の回復、次世代ゲーム機の登場などに期待し、前年比5・9%増とプラス成長に回帰する」との観測が示されている。
このほか、前年5位だった「医療・衛生」が14・7%で「土木建築」と並び3位となり、景気に左右されにくいと言われる医療分野での需要拡大に注目する企業が増加している模様だ。
◆投資分野
今年重点的に投資する分野については【図4】の結果となり、前年1位だった「設備投資」が今回も29・7%で最多となった。
日本ゴム工業会が昨年9月に行った中小企業会員景況調査では、
2020年01月06日