【新年インタビュー】日本ゴム工業会 池田育嗣会長

2020年01月06日

ゴムタイムス社

■ 新年インタビュー

日本のゴム技術の優位性を活用

日本ゴム工業会 池田育嗣会長


 

 スローガンに「会員に愛される工業会」を掲げる日本ゴム工業会の池田育嗣会長(住友ゴム工業会長)に、ゴム産業の今後と運営課題などを聞いた。

 ◆19年を振り返って。

 タイヤ生産は、年初から輸出を中心に堅調だったが10月以降減速し、通年では前年比で微増か横ばいとなる見通しで、景気がかなり冷え込んだという印象だ。工業用品も景気の影響を大きく受け、ホースが3年ぶりのマイナス、ベルトは6年連続でマイナスとなる見込みで、タイヤ以外は対前年割れという状況だ。昨年の新ゴム消費量は、タイヤはほぼ前年並み、工業用品はベルト、ホースが約10%減と見ており、全体として数%減となると予想している。

 景況については、工業会のアンケートでも昨年7~9月以降は悪化したという回答が目立ち、米中貿易摩擦がいろいろな影響を及ぼしているようだ。世界経済がどのようにプラスの方向に動いていくのか、業界全体として注目度が高いと思う。

 自然災害では、台風15号と19号で関東を中心に大きな被害が出た。サプライチェーンの長期寸断には至らなかったが、一つ間違えば供給責任が果たせない事態も起こり得る。BCPは各企業が対応するのが原則だが、今後は工業会として、各企業が持つノウハウをシェアし、広め合うことも必要になるだろう。

 一方、資材関係は、合成ゴム、天然ゴムとも価格が比較的安定し、今のところ価格面でも供給面でも不安はない。

 会員各社に課題を尋ねると、設備の老朽化、従業員の確保、人件費、物流費、コスト増などが挙がった。エネルギー価格や物流費の上昇をいかに価格転嫁するかが課題となっている。

 昨年の良い話題は、叙勲の受章が続いたことで、春の叙勲で加貫ローラ製作所の加貫順三会長と北星ゴム工業の米屋正弘会長が、秋の叙勲で三ツ星ベルトの西河紀男前会長が受章されたのは本当に喜ばしいことだった。

 ◆20年の展望は。

 景気は本当に先が見えないが、米中貿易摩擦の影響が一番大きくなっており、新興国にも影響を与えている。今後、米国の景気がマイナスの方向に変わると全世界の景気が冷え込んでしまうので、米国の景気の良し悪しが全体を左右するだろう。中国は新車販売が減速し、ゴム産業も大きな影響を受けている。また、EV化が進みゴムの部品も変わっていくので、注目度は高い。

 プラスの材料としては、東京オリンピック・パラリンピックに付随した需要が増えるだろう。オリンピックによる需要は今年前半まで続き、終了後もある程度プラスの方向に進むと期待している。自動車でもブレーキや安全装置などの標準装備の動きが進んでおり、これらに向けた新しい部品の需要が生まれればプラスに作用するだろう。EVだけではなく内燃機関車でも高性能化・低燃費化が進んでおり、ゴム製品の需要が伸びる要素はまだまだある。日本が強みとする自動車部品の需要を確保していきたい。中長期的には、燃料電池車やリニア新幹線に伴う需要も増え、ゴム製品が活用されていくと期待している。

 ◆環境への対応は。

 工業会の活動として重要

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