■ 新年インタビュー
「e‐Rubber」に期待
豊田合成 宮﨑直樹社長
昨年創立70周年を迎えた豊田合成。18年に策定した中計「2025事業計画」の達成には、「新技術・新製品がカギになる」と語る宮﨑直樹社長に昨年を振り返ってもらいつつ、新技術や新製品の状況や今年の抱負などを聞いた。
◆昨年を振り返って。
中国やアセアンが落ち込んだほか、インドも年初から厳しい状況が続き、市場環境はそれほど良くなかった。ただ、中国は日系自動車向けが順調で、当社もその恩恵を享受できた。収益の半分以上を占める米国も比較的堅調に推移した。
一方、欧州では年末にドイツの生産子会社の豊田合成メテオール(TGM)の全株式を同国のファンドに譲渡し、欧州事業の再構築にめどが立った。ドイツ生産子会社の譲渡による一時的な損失を除けば、通期は当初計画通りだ。
◆来期の見通しは。
来期も市場環境に大きな変化はないだろう。米国は昨年同様、今年も期待しており、現地工場の生産性向上や新車立ち上げ時の品質ロス低減などに取り組んでいる。
重点市場と位置付ける中国では、日系だけでなく、民族系の自動車メーカーへの販売拡大に向けた活動に注力している。ただ、中国民族系は開発スピードが速く、現地と日本との連携を早く取らないと商権獲得が難しい。その一環として、中国上海の統括拠点の陣容を強化するとともに、日本でも北島技術センター(愛知県稲沢市)の製品開発センターにBR中国技術室を設立した。
◆新技術・新製品の状況について。
中計最終年度の25年度に売上高1兆円、営業利益率8%、ROE10%を目標に掲げているが、目標達成のカギは、新技術、新製品になる。
新技術では、電気で動く次世代
e‐Rubberに続く新技術では、LEDの技術を応用した「GaNパワー半導体」がある。パワー半導体の実用化は、e‐Rubberに比べると時間軸は後になるが、それが2つ目の柱になる。
新製品では、FCV(燃料電池車)の主要部品である高圧水素タンクに期待。同部品を生産するいなべ工場(三重県いなべ市)で、20年代初頭に量産を開始する予定だ。
また、安全規制を追い風に、自動運転技術に対応したハンドルやエアバッグなどセーフティシステム製品も今後需要拡大が見込めるだろう。
◆今年の抱負は。
今年の抱負を言葉で表すと「本領発揮」になる。社長就任から5年間で、LED事業の縮小・整理や欧州事業の再構築、中国の拠点の再編など構造改革を行う一方、インドグジャラート新工場の稼働を始め、米国や中国をはじめとする各地域で生産体制の整備も着実に進めてきた。これにより、今後の収益を伸ばすための準備ができたと思う。ただ、中計で掲げた目標を達成するには、今後も相当のステップを踏んでいかなければならない。そのためにも、社員一人ひとりが保有する能力や持ち味を、当事者意識を持って思う存分に発揮してほしいと思う。
■アングル■
「会社の風土改革に特に力を入れている」と語る宮﨑社長。「働く人が生き生きと自ら積極的に働くことが生きがいにつながる」と強調した上で、「社員が主体的に考え、仕事を行うためにも、今後も風土改革の取り組みにまい進していきたい」と話していた。
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