海洋研究開発機構(JAMSTEC)は3月5日、「江戸っ子1号」を利用した深海底での生分解プラスチック分解試験を開始すると発表した。
海洋プラスチックごみ問題が注目される中、微生物により分解する生分解プラスチックが対策として有効であるが、深海底での分解挙動はこれまで判っていない。
同機構は、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム「革新的深海資源調査技術」で募集した深海底環境利用公募の採択課題として、日本バイオプラスチック協会(JBPA)と共同で、フリーフォール型小型ランダー「江戸っ子1号365型」を用いて生分解プラスチックの材料サンプルを南鳥島周辺海域の深海底環境(水深5000m超)に約1年間暴露する長期分解試験を2020年3月より開始する。また、江戸っ子1号365型の持つタイムラプス映像撮影の機能によってサンプルの分解過程を映像として捉える。沿岸の浅海域における生分解プラスチックの分解試験は既に実績があるが、水深5000m以上の深海底における分解試験は世界初の試みとなる。江戸っ子1号365型は、3月7日から開始する航海を利用して設置される予定となっている。
同研究は同機構とJBPAに産業技術総合研究所、東京大学を加えた産学官連携の体制で実施し、江戸っ子1号365型の回収後にサンプル分析を進めて深海底における生分解性プラスチックの分解挙動を明らかにする。
生分解プラスチックの深海底の環境での分解性を確かめることで、海洋の表層から深海底に至るまでの幅広い海洋環境で安定して分解する材料開発を加速することが期待される。また、サンプル間での分解挙動を比較することで、生分解性と耐久性のバランスを考慮した製品開発につながる。そのほか、JBPAはプラスチックの生分解性に関する国際標準の我が国における審議や規格の取りまとめを日本プラスチック工業連盟から委託されていることから、今回の試験の成果は深海環境での分解試験の分析評価方法の確立、さらには国際規格化に寄与することが期待される。