宇部興産は3月23日、豊田通商の連結子会社で、米国においてコンパウンドの受託加工を行っている「プレミアムコンポジットテクノロジーノースアメリカ(PCTNA社)」の買収を決定したと発表した。1月31日に株式譲渡契約書を締結し、4月1日を目途に同社がPCTNA社の株式100%を豊田通商から譲り受け、新体制での事業開始を予定している。
PCTNA社は、豊田通商グループ企業として2009年に設立され、米国において主にナイロン以外の樹脂を原料とするプラスチックコンパウンド受託加工事業を行っている。日系自動車メーカー向け品質管理体制を整備し、設立以来、同業界向けに長年の供給実績を有し、その品質において高い信頼を得ている。
同社は、現中期経営計画においてナイロン6事業を積極拡大事業と位置づけ、市場優位性を持つ押出用途の更なる強化と、射出用途の事業領域の拡大を進めている。昨年3月には、ウベコーポレーションヨーロッパがスペインのプラスチックコンパウンド製造・販売会社を買収し、射出・コンパウンド事業における海外拠点の拡充を行っている。
今回の買収により、従来の日本・タイ・スペインの製造拠点に加え、北米においても自社コンパウンド製造拠点を獲得し、この4極体制の確立により、自動車メーカー(OEM)/自動車部品メーカー(Tier―1)へのグローバルな供給が可能となる。自動車分野で世界有数の市場でもある北米には、多くの日系OEM/Tier―1が進出し、製造だけでなく開発業務も行う等、現地化を加速化させている。同社はPCTNA社を通じ、現地調達材提供を軸に、新たな価値を市場と顧客に提供する。
また、PCTNA社の持つ樹脂コンパウンドに関する技術・ノウハウの獲得により、市場のニーズに応じた最適な樹脂種の提案、組み合わせが可能となり、同社グループの製品開発、市場開発に大きく寄与することが期待される。コンパウンド受託加工を新たな成長の機会と捉え、内製コンパウンドとのシナジーを通じ事業を展開することで、射出・コンパウンド市場における地位をより強固なものにしていく。