芝浦工業大学は3月31日、同大学工学部応用化学科の大石知司教授が、フッ素樹脂上への簡便な銅微細配線形成技術を開発したと発表した。
同技術は、撥水性で他材料との接合が難しいフッ素樹脂への銅微細配線形成を可能とするもの。大がかりな装置を使わずプロセスも簡便なため、配線形成を低コスト化できる。フッ素樹脂は5G時代の情報の大容量高速伝送に必要な処理性能向上の役割を期待されており、半導体基板などへの導入が可能となる。
同大は同技術のポイントとして、「撥水性で配線やデバイス形成が困難なフッ素樹脂材料(PTFE)上へ、100μm幅の銅微細配線を形成」「貴金属Pd触媒を使用せず、全て常圧下でのプロセスで配線形成ができるため、プロセスの簡略化と低コスト化にも寄与」「5G時代の情報大容量高速伝送に貢献」の3点を挙げている。
5Gサービスが開始するなど、情報の大容量化と高速伝送が飛躍的に発展している。伝送信号の高周波化が進む中、フッ素樹脂材料ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、誘電率と誘電損失が小さく、高周波領域で良好な誘電特性を持つ樹脂基板材料として大きく期待されている。しかしPTFEは表面エネルギーが極めて小さく撥水性であるため、他材料との接合が難しく、PTFE上に配線やデバイスを形成することは困難だった。
そこで、同研究では、光照射とアンモニア水溶液を用いたフッ素樹脂の簡便な親水化法を開発するとともに、貴金属を用いないCu2+イオンを触媒とする無電解Cuめっき膜の作製と、独自開発した有機無機ハイブリッド膜を用いた銅微細配線形成技術の開発に成功した。
フッ素樹脂の親水化にはプラズマ処理など大がかりな真空装置を必要とする。一方、今回は入手しやすいアンモニア水溶液の蒸気中にフッ素樹脂基板を設置してエキシマ光を照射することにより、フッ素樹脂基板表面の親水化に成功。この表面にはアミノ基が形成されており、水溶液中でこのアミノ基とCu2+イオンの間に配位結合を形成できること、無電解Cuめっきによりフッ素樹脂上にCu膜を形成できることを発見した。独自に開発した感光性有機無機ハイブリッド樹脂材料を成膜後、フォトリソ法を用いて100μm幅の銅微細配線を形成することにも成功した。
この手法は通常の銅めっきに使用される貴金属Pd触媒を使用せず、すべて常圧下でのプロセスで配線形成ができるため、プロセスの簡略化と低コスト化にも寄与する技術となっている。
今後は配線幅の更なる微細化に向け、光照射プロセスの精密化を検討している。また、レーザ照射を用いたダイレクトパターニングの手法も開発しており、更なる簡便な銅配線形成技術の開発に向け検討を行っていくとしている。