多品種小ロット生産の強みを活かし、多種多様な顧客ニーズに対応するデンカグループのデンカエラストリューション(群馬県高崎市、長坂英昭社長)。
同社はコンパウンド事業と熱膨張性耐火材事業の2つの柱を軸に事業を展開。コンパウンド事業はCRを中心にEPDM、NBR、SBR、NRなど、ほぼ全種類のゴムコンパウンドを扱っているのが特徴だ。また、熱膨張性耐火材については、他社との差別化を図るため新製品の開発を推し進めている。そのほか、押出成形の止水材、プレス成型品など多様な工業用ゴム製品の製造・加工・販売も行っている。
下半期の需要動向によると、コンパウンド事業は上半期の堅調さが下半期も続いており、前年並みを維持した。また熱膨張性耐火材事業も住宅向け需要の伸びが下半期に入っても続いていたが、年末あたりから若干落ち着きを見せ始めたという。
足元の動向では、長坂社長は「米中貿易摩擦や新型コロナウィルスの影響が出始めているのではないか。先行き不透明感が強い」との見方を示す。
通期は上半期の堅調さが下半期の減少傾
今期の事業戦略は、デンカの中期経営計画「Denka ValueーUp」の成長戦略の一つである「基盤事業のスペシャリティー化」に基づき、①コンパウンド事業の強化、②熱膨張性耐火材のシェア拡大を掲げており、収益改善や生産性向上に取り組んでいる。
コンパウンド事業の強化では、デンカが新開発した機能性エラストマー「Evolmer®(エボルマー)」の展開が重要なカギだと捉えており、すでにプレス成形による試作品をユーザーに提案している状況だ。
熱膨張性耐火材のシェア拡大では、「生産の効率化と共に特性面の差別化を図り、新製品の開発をしていくことで販売増を狙っていく」(長坂社長)としている。
来期のテーマは「変革」を挙げ、「売上や利益を伸ばしていくために、生産工程を見直す必要があり、新しい視点で生産を行っていきたい」(長坂社長)とし、製造部門で人事を刷新していく考えだ。また最近の自然災害の多さに対して、BCPの観点で原材料の調達をはじめ、設備や生産などの見直しを行っていく。
そのほか、環境対策にも力を入れ、21年度までに環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」を取得していく計画。また環境対策として、コンパウンド事業では早期に脱DOPを視野に入れユーザーへの切り替えを促している。
働き方改革について、同社は以前から従業員が働きやすい環境づくりを着手しており、現場の安心・安全に対する対策にはとくに力を入れている。長坂社長は「一昨年からリスクアセスメントに注力した結果、ここ2年間は無災害を達成した」と述べ、引き続き安全を含めた職場環境づくりに力を入れていく方針だ。
今後も同社の強みである複数の加圧ニーダーなどの設備の特長を活かし、特殊な混練りで少量多品種に対応し、ニッチな分野に注力していく。
全文:約1266文字