東洋紡は4月13日、最短60分以内でウイルスの抽出と検出・測定が可能な新型コロナウイルス検出キット「SARSーCoVー2ディテクション・キット」を開発したと発表した。治療薬・ワクチン・消毒液などを開発する研究機関向けに同日より販売を開始する。価格は100回用で9万円。
同キットは、遺伝子の抽出工程と増幅・検出工程にかかる手間・時間を大幅に短縮する。遺伝子の抽出工程では、サンプル中に夾雑物(きょうざつぶつ)が混じっていても反応が阻害されにくい、同社独自の遺伝子増幅酵素を採用。夾雑物を取り除く必要がなくなり、煩雑な遺伝子の精製過程を省略できるので、検出キットに含まれる前処理液とサンプルを混合させるだけで遺伝子の抽出工程が最短2分で完了する。増幅・検出工程では、試薬の配合を調整し、酵素の働きを最適化。増幅に掛かる時間を従来の半分以下の最短56分に短縮した。これにより、新型コロナウイルスの抽出から検出・測定まで最短60分以内で実現する。同キットは、汎用的な遺伝子増幅装置であるリアルタイムPCR装置だけで使用可能で、抽出装置などを新たに準備する必要はない。
同キットは、全国の研究機関や大学の研究室、製薬メーカーの研究部門向けに販売し、新型コロナウイルスの治療薬等の早期開発に貢献していく。今後は、同キットの開発で得られた知見や技術を応用し、全自動遺伝子解析装置用の診断薬の開発に取り組む。
なお、同キットは、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、北里大学大村智記念研究所と国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第2室との共同研究により開発された。
新型コロナウイルス感染症が急速に拡大する中、治療薬等の早期開発が求められている。治療薬等の開発には、ウイルスに感染した細胞(サンプル)に治療薬等を投与した後で、ウイルスの増殖をどの程度抑制できているか、PCR法を用いてウイルスの遺伝子を増幅し、検出可能になるまでの時間などを計測しながら、何度も検証する必要がある。PCR法では、ウイルスから遺伝子を抽出する工程に約30分~2時間、遺伝子を増幅・検出する工程に約2時間かかるため、これまで約2時間半以上かかるのが一般的だった。このため、治療薬等の研究・開発において大量のサンプルを扱う際に、多くの手間や時間を要する一因となっていた。