ランクセスは5月12日、世界最北に位置するジン・ウイスキー蒸留所に新しく作られた樽貯蔵施設のファサードに、同社の無機顔料「バイフェロックス」が採用されたと発表した。
このファサードは、表面加工したコンクリートを漆黒の顔料で着色し、古い木の焼き板で覆われているような風合いを実現している。カイロ・ディスティラリー社が所有するこの洗練された外観の建物は、ヘルシンキに拠点を置くアバント・アーキテクト社によって設計され、フィンランドコンクリート建築賞を受賞した。
アバント社は、伝統的な木造倉庫に着想を得た1056㎡の漆黒の樽貯蔵施設を設計する計画を立てた。樽貯蔵施設は生産工程の重要な一部分で、ウイスキーと銘打つためには少なくとも3年間オーク樽で熟成されなければならず、膨大な貯蔵スペースが必要となる。
加えて、ウイスキーは可燃性の液体であるため、樽貯蔵施設に対する厳しい防火安全規制がある。
同社の無機顔料ビジネスユニットの建設マーケットセグメントマネージャー、オリバー・フレシェントレーガー氏は「キャスティング試作を何度か行った後、濃黒色のランクセス顔料『バイフェロックス360』をセメントに対して5%の重量で添加することで、追加の塗装は不要となった」と述べている。
コンクリートに合成酸化鉄顔料を使用し、かつ希望する色を確実に得るには、特に黒色顔料の場合、基礎技術と応用技術の広範な専門性が必要とされる。硬化後のコンクリートを目標とする色調にするためには、顔料の品質と混合具合のみならず、セメントの種類やコンクリート骨材も影響を及ぼす。
今回のプロジェクトでは標準のコンクリート骨材が、フィンセメンティ社の白色セメントと共に使用された。その結果、着色され風合いも再現されたコンクリートで、風化した木材と見間違える外観を再現することができた。
フィンランドコンクリート建築賞のツオモ・ハール審査委員長は「樽貯蔵施設の表現力豊かなファサードは、単に巧みに実現されたソリューションというだけではない。優れた建築と建設の必要条件を見事に満たす設計デザインと技量を兼ね備えた、機能的な生産チームの成果とも言える」 と述べている。