合成ゴム・化学メーカーの20年3月期決算から、合成ゴムとエラストマー事業の現況をピックアップした。市況の低迷や自動車減産などから、減収減益となる企業が大半を占めた。
◆JSR
エラストマー事業は、中国で新型コロナの影響により第4四半期に自動車・タイヤ需要が大きく落ち込んだことや、市況の大幅な悪化で売買スプレッドが低下したことが響いた。販売数量は、SSBRは伸長したがその他の合成ゴムの販売数量が減少し、減益要因となった。
◆日本ゼオン
エラストマー素材事業は、合成ゴム関連では、自動車産業や一般工業品用途の需要が弱く、原料連動で価格が下落した影響を受けた。また、合成ゴム事業を出荷量ベースで見ると、汎用ゴムは前年度並みの出荷を維持したが、特殊ゴムは需要が弱く出荷量が減少した。
◆三井化学
エラストマーは、アジアを中心に需要が鈍化し減収となった。機能性コンパウンドは欧米・中国での自動車生産減速の影響を受け、減収となった。
◆住友化学
石油化学事業では、石油化学品や合成樹脂は原料価格が前連結会計年度を下回ったことにより、市況が下落した。コア営業利益は、石油化学品やメタアクリルなどの交易条件の悪化などにより、減益となった。
◆旭化成
パフォーマンスプロダクツ事業は、連結子会社化による利益貢献があったものの、タイヤ向け合成ゴムの操業度悪化、販売数量減少及び交易条件悪化に加え、各繊維製品やエンジニアリング樹脂の販売数量減少、各事業における固定費の増加などにより、減益となった。
◆宇部興産
合成ゴム事業は、販売価格が原料ブタジエン価格とともに下落傾向で推移する中で、需要が低迷したことにより販売数量も減少したことから、減収減益となった。
◆デンカ
クロロプレンゴムは、全体的に需要が減退したため販売数量が減少し減収。また、スチレンモノマーやABS樹脂、シンガポールの子会社デンカシンガポール社のポリスチレン樹脂、MS樹脂の販売は概ね堅調に推移したが、原材料価格の下落に応じた販売価格の見直しを行ったことから減収となった。
◆東ソー
クロロプレンゴムは、アジア向けを中心に輸出が減少した。利益面は、原燃料価格の下落による交易条件の改善はあるものの、販売数量減少の影響が上回った。
◆クラレ
イソプレン関連は、ファインケミカルで中国向けを中心に出荷が減少した。熱可塑性エラストマーは、米国の需要が堅調に推移したが、アジアの販売は苦戦した。
◆信越化学工業
シリコーンは機能製品を中心に拡販を進めたが、汎用製品の価格下落の影響を受けた。
◆ダイキン工業
フッ素樹脂は、LANケーブル関連の需要は比較的堅調に推移したものの、半導体や自動車関連の世界的な需要が落ち込んだことなどで、売上高は前年同期を下回った。フッ素ゴムは、米国、欧州、中国などで自動車関連分野の需要が落ち込んだ影響を受け、売上高は前年同期を下回った。
2020年06月04日