シート状潜熱蓄熱建材に初採用 住友化学のヒートレージ

2020年06月22日

ゴムタイムス社

 住友化学は6月18日、同社が開発した樹脂製蓄熱材「ヒートレージ」が、建材メーカーから販売されたシート状潜熱蓄熱建材に採用されたと発表した。「ヒートレージ」を用いた製品が社会で実装・販売されるのは今回が初めて。

 「ヒートレージ」は相変化を利用して、20~50度の範囲内の所望の特定温度域で熱の出し入れをするように設計された樹脂で、押出や射出、紡糸などの成形加工を容易に行うことができる。また、成形加工しても蓄熱する温度域で固体の形状を維持できることから、従来の低分子系蓄熱材のように、蓄熱して液化した際に樹脂が漏洩しないようアルミパックやプラスチック、カプセルなどの容器に封入して使用する必要がない。そのため、蓄熱材成形品の切断や釘打ちといった加工の自由度を高めることができる。

 一般的に、潜熱蓄熱建材は冬期に限定した目的で使用されている。一方、夏期では、日中の屋根面の表面温度は、外気温に対して非常に高温になり、室内温度の上昇につながることや、一度室内空間に入った熱は夜間も逃げにくいといった課題がある。近年、建材分野では、住宅における省エネや快適性向上に対するニーズが年々高まっていることから、同社は建材メーカーとともに、「ヒートレージ」を日本の家屋の弱点の一つである夏期の屋根の熱遮断能力不足を克服するための材料として活用できないか検討を進めてきた。その結果、屋根材料の発泡プラスチック系断熱材の中間に配置することで、夏期日射ピーク時には室内侵入熱を大幅に削減する効果があり、さらに一日を通して冷房負荷の軽減と省エネルギー効果が得られるため、今回の採用に至った。

 同社では、「ヒートレージ」は建材用途以外でも、さまざまな分野で省エネルギー化や人々の暮らしの快適性向上に寄与すると考えている。具体的には、シート状または綿状にして自動車のルーフや内装材に用いることで、家屋の屋根材の場合と同様に省エネルギー性や快適性を高めることができる。また、服飾では、衣服内気候を快適に保ち、心地良さを継続させることが可能になる。

 同社は、これからも市場の潜在ニーズを発掘することで、既存事業の枠を超えた新たなアプリケーションへの展開などにつながる新規製品・技術を開発し、サステナブルな社会の実現に貢献できるソリューションを提供していくとしている。

 

ヒートレージは蓄熱する温度域においても固体の形状を維持

ヒートレージは蓄熱する温度域においても固体の形状を維持

シート状潜熱蓄熱建材により外部からの熱を遮断する

シート状潜熱蓄熱建材により外部からの熱を遮断する

 

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