【開発経緯概略】
ポリブチレンテレフタレート(PBT)はジメチルテレフタレートまたはテレフタル酸と1,4-ブチレングリコールとの重縮合により得られる熱可塑性の飽和ポリエステルである。PBTは、1970年代初頭にアメリカのセラニーズ社が工業化し、主に強化グレードで市場開発が進んできた汎用エンプラである。汎用エンプラの中でもっとも歴史が新しいプラスチックである。エンプラとしての熱可塑性飽和ポリエステルの中ではPBTが成形性、物性、価格等でバランスが取れており、もっとも需要量が多い。
【性質、加工、その特徴】
① PBTは、結晶性プラスチックで、融点が225~228℃、結晶化度は35~45%である。
② Tgが40~60℃であるので実用温度範囲ではゴム状態である。このため非強化グレードの荷重たわみ温度の応力依存性が大きい。また、強さ、弾性率はこの付近で大きく変わる。
③ 結晶化速度が速いので成形サイクルが短い。
④ 熱劣化特性に優れておりUL温度指数は力学的性質(衝撃なし)140℃、電気的性質130℃である。
⑤ 結晶性であるので、有機溶剤、潤滑油、ガソリン等には十分な耐性がある。強アルカリ、フェノール類、塩素系炭化水素に侵される。
⑥ エステル基があるので加水分解により劣化することがPBTの最大の留意点である。
⑦ 結晶性プラスチックの中では耐候性は比較的良好である。
⑧ 電気的性質が優れ、温度による電気抵抗、誘電率の変化も小さい。
⑨ 吸水率が小さいので、力学的性質等の変化が少なく、寸法安定性も良好である。
⑩ 酸素指数は、徐燃グレードで約21%、難燃グレードで約29%である。
⑪ ガラス繊維強化グレードは、摩擦特性が良い。
⑫ 非強化グレードの成形品の表面光沢は良好である。またバネ特性を持つ。
【新製品への応用と主な用途】