NECは7月3日、海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)とともに、海洋プラスチックごみの動態や環境への影響を評価するためのマイクロプラスチック計測手法の高度化に向けて、AIによる画像認識技術を活用して高速かつ自動的に海水や前処理を施した堆積物からマイクロプラスチックを計測するシステムを開発し、JAMSTECの研究開発を支援したと発表した。
JAMSTECは、海洋科学技術の総合的な研究を行う国立研究開発法人であり、従来から海洋マイクロプラスチックを検出する分析技術の研究開発に取り組んでいる。今回NECは、最先端AI技術群「NEC the WISE」のディープラーニング技術を搭載した「RAPID機械学習」による画像認識技術で、マイクロプラスチックを高速かつ高精度に検出・分類する仕組みを提供した。あわせて、蛍光顕微鏡で撮影したマイクロプラスチックが試料中を流れる動画から、AI連携のための画像を抽出してデータ化するソフトウェアも提供した。
具体的には、JAMSTECのこれまでの研究開発の知見を活かし、海水や前処理をした堆積物など試料中のマイクロプラスチックを蛍光色素で染色し、検出に最適な速度で流しながら、蛍光顕微鏡で動画を撮影する。次に、今回開発したソフトウェアにより、この動画からマイクロプラスチック一つひとつを画像データとして自動抽出する。さらにAIによる画像認識技術を活用することで、毎分60個の処理速度で、サイズや形状を自動的に分類・集計することが可能となった。
これまでの調査手法は、海水や前処理を施した堆積物などを目の細かい網ですくい、その中からマイクロプラスチックを顕微鏡などを用いて一粒ずつ手作業で拾い出して分析するのが一般的。しかし、これには膨大な時間と手間がかかるだけでなく、一般的に用いられている網の目をすり抜ける300μm以下の微小な粒子を過小評価してしまうという課題があった。今回の開発により、これまで手作業で行なってきたマイクロプラスチックの検出を、自動化・高精度化することを実現している。
今後この計測手法が確立されて普及することで、マイクロプラスチック汚染の実態解明が進み、適切な排出規制の立案に貢献できることが期待される。