帝人は7月21日、同社の炭素繊維「テナックス」を使用した中間材料が、エアバス社の主力旅客機である「A320neo」の主翼スポイラーの部材として採用されたと発表した。
今回採用された炭素繊維中間材料は、「テナックスDry Reinforcements Non―Crimp Fabrics」(ノンクリンプクロス、以下「テナックスDRNF」)および「テナックスDry Reinforcements Braided Fibers」(組紐、以下「テナックスDRBF」)。
「テナックスDRNF」はNCFの一種で、表面が滑らかであることから、母材となる樹脂がシート上で均一に浸透しやすく、従来の航空機向け高性能熱硬化プリプレグと同等の物性を有するなどの特長がある。一方、「テナックスDRBF」は、炭素繊維原糸を三つ編み構造の組紐状にしたもので、その形状から高い伸縮性があり、シート状中間材料から成る複合材料製の航空機部品に生じる空間を埋めるフィラー材の役割を果たす。
なお、これらの中間材料が使用されることになった「A320neo」向けの主翼スポイラーは、世界有数の航空機構造部材メーカーであるスピリット・エアロシステムズ(以下「スピリット社」)のプレストウィック拠点(英国スコットランドサウス・エアシャー州)で生産される。両中間材料の組み合わせによる炭素繊維複合材料(CFRP)のスポイラーは、スピリット社においてRTMにより成形されるため、従来のオートクレーブ成形に比べて生産性やコスト効率などが優れており、これらの点が高く評価されて今回の採用に至った。
炭素繊維「テナックス」は、エアバス社の「A380」の一次構造材や各機種の二次構造材に採用されており、近年は、中間材料が「A380」や「A350XWB」の一次構造材用に採用されるなど、同社グループは、30年以上にわたって炭素繊維製品の安定した供給実績と品質優位性を誇り、エアバス社のトップクラスのサプライヤーとしての地位を確保している。
同社は、2020年度からの新・中期経営計画において、航空機向け炭素繊維中間材料の展開を「将来の収益源育成(Strategic Focus)」と位置づけており、高強度高弾性率炭素繊維や熱可塑性樹脂を使用した一方向性プリプレグテープをはじめ、炭素繊維強化熱可塑性樹脂積層板、熱硬化性プリプレグなどで、グローバル市場の川上から川下に至るまで、幅広く用途開発を推進していく。そして、航空機向け炭素繊維製品のマーケットリーダーとして、ソリューション提案力を一層強化し、2030年近傍までに航空機用途で年間900百万米ドル超の売上を目指すとしている。