ランクセスは8月20日、逆浸透膜ビジネスを、持続可能な資源管理の世界的なリーダーであるフランスのスエズ社に売却すると発表した。両社は7月15日付けで売却に関する合意書に署名し、売却価格は非公表としている。売却手続きは2020年末までに完了予定。同社は、継続してポートフォリオ開発を行っており、それに従って現在、水処理技術ビジネスの再編を実行している。今後、イオン交換樹脂ビジネスに注力し、主に高性能アプリケーション向け市場での成長を目指す。
同社はドイツのビターフェルト拠点でかん水および海水処理において重要な役割を果たす逆浸透膜を製造しているが、スエズ社が今後このプラントと研究施設、全従業員を引き継ぐ。2019年の同ビジネスの売上高は数千万ユーロ。
同社は、イオン交換樹脂ビジネスをさらに拡大していく予定。新たな製造施設の建設を計画しており、投資額は今後数年間で8000万ユーロから1億2000万ユーロを見込んでいる。同社の最高経営責任者(CEO)であるマティアス・ツァハト氏は、「拡大する世界的需要に対応するため、ランクセスはイオン交換樹脂の生産能力拡大に投資する。同時に、特に将来有望な市場セグメントにおける成長を目指している」と述べている。
新たなイオン交換樹脂プラントは、2万から3万㎥の生産能力を有し、今後5年以内に完成する予定で、間もなく具体的な建設予定地を決定する。特殊化学品メーカーである同社は、現在、ドイツのレバクーゼンとビターフェルト、インドのジャガディアを拠点として、イオン交換樹脂を製造している。
イオン交換樹脂は、食品産業や医薬品産業などにおける最新の精製プロセスに大きく貢献している。半導体産業では、マイクロチップ等の製造に必要な超純水製造などで重要な役割を果たす。また、電池製造に不可欠な金属リチウム、ニッケル、コバルトの抽出に使用されるため、e―モビリティへの関心の高まりを背景に電池産業においても高い需要が見込まれる。さらに、イオン交換樹脂は、発電所、化学産業、マイクロエレクトロニクス、飲料用水処理にも使用されている。