SABICは8月26日、5G基地局や高速サーバーなどに使用される高性能プリント基板(PCB)の製造に向けて、同社のスペシャリティ「ノリルSA9000樹脂」の生産能力を大幅に向上させると発表した。2019年の増強に続く今回の能力拡大によって、アジア地域におけるノリルSA9000樹脂の生産量は、2019年に比べてほぼ倍増し、2018年の水準に対して10倍になるものと見込まれる。
この生産能力の増強により、ハイエンドCCL(銅張積層板)向け需要に対する世界的な材料リードタイムを短縮でき、また急激な需要変化に対しても柔軟に対応可能となる。さらに今回の能力拡大は、将来の製品開発へ向けた機能を備えることとなる。この拡大プロジェクトは現在インドで進行しており、2020年中に完了の予定。
ノリルSA9000樹脂は、CCLの重要な構成材料として、5Gインフラ市場向けPCBに世界中で使用されており、モルドール・インテリジェンスの報告によれば、この市場は2020年から2025年の間の年平均成長率(CAGR)が53%を記録すると予測されている。
5Gネットワークのインフラに使用されるハイエンドPCBには、より高い周波数で高速と低挿入損失を実現するというニーズに対応可能な高性能の銅張積層板が必要とされている。ノリルSA9000樹脂は、ポリフェニレン・エーテル(PPE)をベースとする、低分子量の二官能基をもつ変性オリゴマー。材料配合メーカーはこの樹脂を利用することで、耐熱性、寸法安定性、熱膨張率(CTE)、高多層化のバランスを取りながら、低損失のCCL製品の生産が可能となる。
ノリルSA9000樹脂は、既存のCCL生産工程で使用でき、より柔軟な材料配合を提供する。また、トルエンやメチルエチルケトン(MEK)など、従来の溶剤に溶解し、スチレン系、アリル系、アクリル系、マレイミド系、メタクリル系や、不飽和ポリエステルなどのモノマーおよび樹脂といったさまざまな熱硬化性樹脂系と配合することができる。